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On the Production
by 井口健二
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■500ページの夢の束(インクレディブル・F、爆弾処理班、寝ても、ゲンボとタシ、わがチーム、きみの鳥は、モアナ、ヴァンサン、クレFM)
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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※
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『500ページの夢の束』“Please Stand By”
2013年10月紹介『セッションズ』のベン・リューベン監督が
ダコタ・ファニングを主演に迎えて、自閉症の女性が、ある
ドラマを切っ掛けに周囲との関係を再構築して行く姿を描い
たヒューマンドラマ。
あるドラマと書いたのは『宇宙大作戦/スター・トレック』
で、原題は、カーク船長が状況不明の時によく口にする台詞
(吹替は「そのまま待機」)なのだそうだ。そして物語は、
その『スター・トレック』が放送開始50周年を迎えて、記念
番組の脚本を一般公募しているという状況から始まる。
その話を聞いた主人公は、長年観てきた最愛の番組のため、
自分の知識を総動員して脚本を書き始める。そのストーリー
はエンタープライズ号が破壊され、カークとスポックが2人
だけで砂漠の星に取り残されるというもの。そしてそのプリ
ントアウトは500ページに近いものになる。
ところが脚本が出来上がったのは2月13日の土曜日、応募の
締め切りは16日の午後5時で郵送必着。しかし翌日は日曜日
で郵便の集配はなく、15日も祝日で郵便は送れない。そこで
彼女はサンフランシスコの住まいからロサンゼルスのパラマ
ウント本社まで、自力で届けることを決意するが…。
自閉症の施設で暮らし、日々のスケジュールは細かく決めら
れ、外出はアルバイトのCinnabonの店に行くことだけの主人
公には、それは一大決心の冒険に他ならなかった。そしてそ
の旅には愛犬も同行する。
共演は2018年3月11日題名紹介『アンロック』などのトニ・
コレット、2013年6月紹介『スター・トレック イントゥ・
ダークネス』でキャロル・マーカスを演じたアリス・イヴ。
他に2014年『ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声』などの
リヴァ・アレクザンダーらが脇を固めている。
脚本はマイクル・ゴラムコ。フィリピン・マニラ生まれで、
テレビシリーズの“Grimm”なども手掛ける劇作家が、自身
の舞台劇を基に執筆したものだ。
天才子役と称されたダコタ・ファニングも1994年生まれだか
らすでに24歳。最近では妹のエルの活躍も目覚ましいが、妹
が先に大人の役に挑戦しているのに対して、本作での21歳の
役はダコタの女優としての第2章の幕開けともされる。
そこに選ばれた役柄が自閉症というのは、彼女の出世作『ア
イ・アム・サム』に通じるものも感じるが、彼女自身は実際
の患者に取材しても敢えてそれを真似ることは避け、自分の
中のそれに近い要素を引き出して役に挑んだそうだ。
そして本作の中の『スター・トレック』に関しては、感情を
表に出すことをしないスポックに対して主人公自身の想いが
重なるという設定で、後半のエピソードと共にファンにはも
はや涙腺の決壊が避けられない展開になっている。
当然SF映画ではないけれど、トレッキーは必見の作品だ。
公開は9月7日より、東京は新宿ピカデリー他で全国ロード
ショウとなる。
なお本作に関しては、後から試写を見た家内から、ダコタの
映画前半での仕草が、彼女の出世作と言える『宇宙戦争』に
基づいていると指摘された。
それは彼女が両手で輪を作って「この中は大丈夫」と自分に
言い聞かせるシーンで、これは『宇宙戦争』では兄が妹を落
ち着かせるときに行った仕草なのだ。つまり彼女は『スタ・
トレ』以外のSF映画へのオマージュも行っていたもので、
その点にも感心した。

この週は他に
『インクレディブル・ファミリー』“Incredibles 2”

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06月24日(日)
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