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On the Production
by 井口健二
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■審判(告白小説、アメリカン・アサシン、兄友、ガチ星、ゲティ家の身代金)
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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※
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『審判』
1924年に没したチェコの作家フランツ・カフカによる、作者
死後の1927年に発表された未完(ただし発端と結末は完成さ
れていた)長編小説の映画化。
主人公は30歳の誕生日に逮捕される。逮捕と言っても通知が
あっただけで、その通知に来た男たちに付き纏われる以外は
生活に何ら変わりはない。とは言っても通知に従って裁判所
に出向いた主人公は、具体的な罪状も聞かないまま、意味不
明の審理に付き合わされることになる。
このような発端から、主人公の勤務先や住まいの隣人との奇
妙な出来事が綴られて行く。その中には逮捕の通知に来た男
が繰り返し観るという門番のいる謎めいた建物の話なども語
られる。そして主人公は、叔父やその叔父に紹介された弁護
士らと共に逮捕回避の道を探るのだが…。
なお今回の映画化では、物語の背景は現代の日本と思われる
時代に変更されて再構築されている。
脚本と監督は、英国生まれで1988年に来日、上智大学外国語
学部英語学科教授のジョン・ウィリアムズ。監督は2001年の
デビュー作以来4作目で、過去の作品は各国の映画祭などで
グランプリを含む多くの受賞に輝いている。
出演は、監督の過去作にも出ているにわつとむを始め、多く
は常連俳優が締めるが、他に高橋長英、品川徹、歌舞伎役者
の坂東彌十郎らが脇を固めている。
カフカの作品は不条理と呼ばれ、常識では在り得ない物語が
展開されて行くものだが、本作においても社会通念を超えた
理不尽さが随所に描かれる。とは言ってもそれは主人公の立
場から見たものであり、相手側にはそれなりの理論があるの
かもしれない。今回の映画化ではそんなことも感じた。
20世紀を代表する文学の一つともされる原作からは、過去に
も1963年オーソン・ウェルズ監督版や、1992年デヴィッド・
ジョーンズ監督版が知られるが、92年版が1912年を背景にし
ているのに対して、63年版と本作はそれぞれの映画の制作時
が背景にされている。
それは原作の普遍性にもよるものだが、特に今回の映画化を
見ているとむしろ現代の日本にこそ、この作品の意味がある
ようにも感じられた。それはまあ日本に限らず現代の世界の
どの国にも当て嵌まるのかもしれないが…。
因にカフカはユダヤ人だが、ナチスの台頭は原作者の死後の
1933年以降のことだ。
公開は6月30日より、東京は渋谷ユーロスペース他で全国順
次ロードショウとなる。

この週は他に
『告白小説、その結末』“D'après une histoire vraie”
(2012年1月紹介『おとなのけんか』などのロマン・ポラン
スキー監督による2014年『毛皮のヴィーナス』以来、4年ぶ
りの新作。主人公は自らの家族を綴った小説がベストセラー
になった女流作家。しかし次作の筆が進まない彼女の許に、
エルと名のる女性が現れる。彼女は著名人の自伝のゴースト
ライターだと言い、作家同士で理解し合える彼女を自宅に招
いた作家は奇妙な共同生活を始めるが…。出演は監督夫人で
もあるエマニュエル・セニエと、2012年5月紹介『ダーク・
シャドウ』などのエヴァ・グリーン。他にヴァンサン・ペレ
ーズらが脇を固めている。1990年『ミザリー』に似た感じも
あるが、物語はフランスの女性作家デルフィーヌ・ド・ヴィ
ガンの原作に基づくもので、かなり捻りの利いたものだ。脚
本はポランスキーと、2017年4月16日題名紹介『パーソナル
・ショッパー』などのオリヴィエ・アサイヤスが共同で執筆
した。公開は6月23日より、東京はヒューマントラストシネ

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04月29日(日)
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