ID:47635
On the Production
by 井口健二
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■死の谷間(妻よ薔薇、ゆずりは、毎日がアルツ、さらば青春、四月の、TOKYO L D、サバービコン、キスできる、ウィンH、虹色D、リズと)
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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※
※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※
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『死の谷間』“Z for Zachariah”
アメリカの児童文学作家ロバート・C・オブライエンの原作
で、1973年に他界した作家の死後に遺族の手で発表されて、
1976年度のエドガー賞 Best Juvenile Mystery Fiction部門
に輝いた小説の映画化。
因にオブライエンは、2014年に世界のアニメーション専門家
によって選出された歴代ベスト100で、41位に選ばれた“The
Secret of NIMH”(邦題:ニムの秘密)の原作者でもある。
物語の背景は核兵器を使用した全面戦争後の世界。地球上の
ほとんどの場所は放射能で汚染され、人間の居住は不可能に
なっている。ところがその中で唯一つの谷間だけが、地形や
気流の関係なのか汚染を免れていた。そして少女はその谷間
にたった1人で暮らしていた。
そんな谷間に1人の男が現れる。男は不格好な放射能防護服
で身を覆い、可動型の核シェルターを積んだ荷車を引いて谷
間に続く道をやってきたのだ。やがて谷間に辿り着くと男は
ガイガー計で放射線量を確認し、防護服を脱ぎ捨てて森に走
り込む。こうして谷間に第2の人間が現れた。
そんな男を少女は木々の陰から観察していたが、やがて声を
掛けざるを得なくなる。男の存在は善なのか悪なのか。緊張
した状態が続く中で物語は進行して行く。
出演は、2018年3月11日題名紹介『アイ,トーニャ』でオス
カー候補になったマーゴット・ロビー。2013年『それでも夜
は明ける』でオスカー候補のキウェテル・イジョフォーと、
2016年9月紹介『スター・トレック BEYOND』などのクリス
・パイン。
監督は2013年5月紹介『コンプライアンス−服従の心理−』
のクレイグ・ゾベル。脚本はイギリスのロンドン出身だが、
ロサンゼルスの南カリフォルニア大学で映画を学び、2013年
に“Breaking at the Edge”という作品で脚本家デビューを
果たしているニサール・モディの第2作。
本作は新人の登竜門ともされるサンダンス映画祭で、2015年
1月にプレミア上映された。
所謂‘Post-apocalyptic’と呼ばれるジャンルの作品だが、
その旗頭ともされる『マッドマックス』とは一線を画した作
品で、ある種のサヴァイヴァル・ドラマとも呼べるような展
開になっている。でも本当の狙いは登場人物たちの葛藤など
を描いた心理劇という感じだろう。
ただ映画で心理劇というのは小説より難しいもので、本作で
も登場人物たちの心理が明確に描き切れているかというと、
多少物足りない部分は残ってしまう。でもまあサヴァイヴァ
ル劇としてはそれなりに面白く描かれていたし、ほとんどの
観客はそれで満足できるものだろう。
海外の映画評でも評価は高いようだ。
公開は6月23日より、東京は新宿武蔵野館他で全国順次ロー
ドショウとなる。

この週は他に
『妻よ薔薇のように 家族はつらいよV』
(山田洋次監督が2016年から毎年1作のペースで発表してい
るシリーズの第3作。実は監督は2013年に全く同じ顔ぶれで
『東京家族』を撮っており、さらにその間には2014年『小さ
なおうち』、2015年『母と暮らせば』でも家族の絆を描いて
いる。そんな監督の新作は「妻の役割」の見直しという感じ
かな。男性の観客としては多少耳の痛い話が続くが、それな
りに夫の役割の説明もあるのは山田監督の心情というところ
かもしれない。脚本は平松恵美子との共同になっている。出
演は橋爪功、吉行和子、西村まさ彦、夏川結衣、中嶋朋子、
林家正蔵、妻夫木聡、蒼井優。他に小林稔侍、風吹ジュンら

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04月15日(日)
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