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On the Production
by 井口健二
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■第30回東京国際映画祭<コンペティション以外>
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※今回は、10月25日から11月3日まで行われていた第30回※
※東京国際映画祭で鑑賞した作品の中から紹介します。な※
※お、紙面の都合で紹介はコンパクトにし、物語の紹介は※
※最少限に留めたつもりですが、多少は書いている場合も※
※ありますので、読まれる方はご注意下さい。 ※
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<アジアの未来部門>
『アリフ、ザ・プリン(セ)ス』“阿莉芙”
2012年2月紹介『父の初七日』などのワン・ユーリン監督の
新作。主人公は台湾原住民の族長の息子だが、以前から自分
の性の同一性に疑問を持ち、女性になることを願っていた。
そのため都会に出て美容師として働きながらその資金を貯め
ていたが…。同様のテーマの作品は西欧や日本でも散見され
るが、本作の背景はかなり特殊といえる。でも物語は巧みに
作られており、特に結末が素敵だった。
『現れた男』“Ma Na Thee Nee”
タイ文学界のカリスマと称される作家プラープダー・ユンが
描くミステリアスな作品。都会の高層マンションに住む女の
部屋に謎めいた男が転がり込む。ところがその男は、部屋を
自分のものと主張し、女の知らなかった細かな傷や不具合、
壁に掛けられた絵の説明などを始める。果たしてその男の正
体は…。ヒントはいろいろあって、馴れた観客なら先に読め
てしまうが、2作目の監督は手馴れて面白かった。
『ソウル・イン』“花花世界灵魂客”
父親の死後に実家を改装し、遺骨を一時預かる「魂の宿」を
始めた主人公。そこには父親の遺骨も安置され、宿にはいろ
いろな人が遺骨を預けに来る。そして主人公には恋人も出来
るが…。そんな中で主人公は自分を置いて出て行った母親の
ことを思う。監督のチョン・イーは、中国出身で熊本の大学
とフランスで映画を学んだとのことで、欧州映画風のアーテ
ィスティックな作品に仕上げられている。
『殺人の権利』“Tu Pug Imatuy”
ミンダナオの奥地で狩猟と物々交換で暮らしていた夫婦が、
反政府ゲリラを追う軍隊によってその生活を奪われて行く。
実話に基づく作品とのことだが、フィクションで付け加えら
れたと思しき部分が如何にもという感じで、特に何かを感じ
させるようなものではなかった。フィリピンの映画祭では主
要な賞を総なめにしたそうだが。内容的には題名の存する場
所をもっと明確にするべきだろう。
『老いた野獣』“老兽”
内モンゴルを舞台に事業に失敗し、ギャンブルなどに明け暮
れる不良親父と、それぞれは真っ当な暮らしで父親とも距離
を置く3人の息子との葛藤を描く。現地の事情なども絡むよ
うだが、物語自体はよくある感じかな。中で駐輪場にバイク
とラクダが並んでいる風景はニヤリとさせられたが、内モン
ゴルの映画も何本か観ている中で、もっと独自のものが欲し
かった感じがする。
今年の「アジアの未来部門」は全10作品で、その内の5本
鑑賞した。この部門では作品賞、スペシャルメンション、特
別賞が選ばれるが、残念ながら観た中で受賞したのはスペシ
ャルメンションの『老いた野獣』だけだった。この作品も僕
自身は、あまり評価しなかったので何とも言えないが。
<日本映画スプラッシュ部門>
『二十六夜待ち』
(2017年10月15日付の題名紹介を参照してください。)
『うろんなところ』
実はこの作品もSFにジャンル分けされているのだが、正に
何ともはやという感じだった。夢と現実が入り混じるという
展開だが、これがSFなら「アジアの未来部門」の『現れた
男』の方がよほどだろう。海外の映画祭で受賞歴のある監督
の作品だが、その見るからに奇を衒った演出にも辟易した。
この作品では途中に怪物が登場するのだが、それ自体が意味
不明で、SFとされるのは願い下げの作品だ。
『地球はお祭り騒ぎ』
最初に監督の友人という絵本作家の作品が朗読され、そこか
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11月05日(日)
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