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On the Production
by 井口健二
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■わたしたちの家
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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『わたしたちの家』
2013年12月紹介『神奈川芸術大学映像科研究室』に続く、黒
沢清教授絶賛の東京藝術大学大学院修了制作作品。
物語の舞台は1軒の日本家屋。シャッターを開けて入る狭い
玄関と、その玄関に続く居間と奥の部屋と2階もあって少し
入り組んだ構造になっている。その家には14歳の少女と母親
が暮らしているが、母親は再婚相手を見つけたようだ。
そして同じ家には、記憶を失った女性と社会人の女性も暮ら
しているのだが、2組の住人は互いに同じ空間を共有しなが
らも相手に気付いておらず、次元か何かが異なっているよう
だ。しかし彼女たちに危機が訪れた時…。
SFファンが観れば面白がりそうな題材だが、作品の中では
この現象に対する説明はなく、ただ起きていることとして物
語は進められる。その描き方もまたファンタスティックで、
僕は満足した。
本作は2017年PFFアワードでグランプリを受賞したとのこ
とで、そのレヴューではデヴィッド・リンチとの比較もされ
ている。しかしリンチほど耽美的ではないし、これ見よがし
の奇矯な演出もないから、作品としては取っ付き易い。
そして作品の中では、女性の生き方のようなものが問い掛け
られ、その問い掛けの前では上記の状況などは全く些細なこ
ととなってしまうものだ。
脚本と監督は、本作の前にもPFFで受賞している清原惟。
共同脚本の加藤法子、さらに衣装担当の青木悠里はいずれも
25歳の同世代の女性が集まって製作されている。
出演は河西和香、安野由記子、大沢まりを、藤原芽生。河西
は子役で、大沢はすでに何本かの出演歴がある。他の2人も
そこそこCFなどに出ている女優ようだ。他には映画美学校
アクターズクラスの出身者などが脇を固めている。
家の建つ町は近くに海岸もある場所で、何となく福島県を思
い出させた。でも自動車のナンバープレートが横浜と相模原
で、そうなんだと思っていたら主人公らの歩く商店街に横浜
Fマリノスの応援バナーが掲げられていた。
それで試写後にロビーにいた監督に、「場所は特定できない
方が良かったのでは?」と話を持ち掛けたが、監督からどこ
で場所を特定したか問われた。僕は上記の2点を答えたが、
車は気付いていたがバナーは想定外だったようだ。
つまりナンバープレートに関しては、車は移動するものだか
ら言い訳できるが、Jリーグのバナーは間違いなく場所を特
定してしまうもので、場所を特定されたくなかったらこの辺
には大いに気を使って欲しいと思うものだ。
小うるさい話ではあるが。
公開は2018年1月13日より、東京は渋谷ユーロスペースにて
レイトショウされる。

この週は他に
『We Love Television?』
(1980年代初頭に3本の冠レギュラー番組を持ち、そのいず
れもが視聴率35%を超えて“視聴率100%の男”と呼ばれた
萩本欽一。その番組制作の秘密に迫るドキュメンタリー。作
品は2011年のアナログ放送終了を控えて、「視聴率30%の番
組を作りませんか?」というプロデューサーの誘いに応え、
その企画の立ち上げからリハーサル、本番までを追うもの。
ただまあ最初の内は中々テンションが上がらず、多少たるい
感じはあるが、いざリハーサルが始まるとそこに繰り出され
る発言の重さや番組に対する意欲などで圧倒される。この熱
意が今の日本にも必要だという思いもする作品だった。公開
は11月3日より、東京はヒューマントラストシネマ渋谷他で
全国ロードショウ。)
『劇場版 マジンガーZ/INFINITY』
(永井豪の原作で1972年にアニメ化され、巨大ロボット物の
先駆けとされる作品を、原作者の画業50周年を記念して新た

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10月22日(日)
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