ID:47635
On the Production
by 井口健二
[459745hit]

■仁光の受難
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『仁光の受難』
2016年バンクーバー国際映画祭でプレミア上映されて大評判
となり、その後に釜山、ロッテルダムなど世界各地の映画祭
で上映された日本映画が逆輸入、凱旋公開される。
物語の背景は侍のいる時代。とある寺に仁光という名の僧侶
がいた。勤勉な性格の僧侶は寺でも一番の修行を積んでいた
が、彼には一つの悩みがあった。それはモテ過ぎること。村
に托鉢に行けば老若を問わず女に言い寄られ、男だけの寺で
も怪しい空気に取り囲まれる。
それを自らの不徳とする彼はさらに厳しい修行に励むが、そ
の悩みは中々解消されない。そして托鉢も止められて一人寺
に居た日、忍び込んだ村娘の色香が彼を襲う。そこで至らぬ
自分に気付いた僧侶は修行の旅に出ることにするが…。その
旅でさらなる試練が彼に襲い掛かる。
そこに男の生気を吸い取る妖怪・山女や、人斬りに捉われて
妖怪と化した武士などが絡み、仏道と世俗が織りなす摩訶不
思議な物語が繰り広げられる。
主演は、2015年『BLACK ROOM』などの監督としても知られ、
2002年12月紹介『六月の蛇』など塚本晋也監督作品の常連俳
優でもある辻岡正人。他に元ストリッパーの若林美保、舞台
俳優の岩橋ヒデタカらが脇を固めている。
脚本と監督は、学生映画の出身でCFなども手掛けるフリー
ランスディレクターの庭月野議啓。自身の長編デビュー作と
なる本作は、製作も務める庭月野がクラウドファンディング
を活用して完成させたそうだ。
さらに劇中曲では、世界的に活躍する尺八奏者の神永大輔が
独特の雰囲気を醸し出している。
作品には女声ナレーションが添えられて「日本昔ばなし」の
ような趣だが、その実写の映像はR−12指定を受けるほどの
もの。さらにそこに浮世絵や曼荼羅を模したアニメーション
などが加味されて、摩訶不思議な作品に仕上げられている。
しかも侍なども登場する内容だから、これは海外の映画祭で
は大受けすること間違いなしの作品だ。そしてそれは海外で
は爆笑も呼んだそうだが、日本人の目で観ても愉快この上な
い作品になっている。
R指定の描写もそれなりに濃厚で、他の宗教でここまでやっ
たら問題にもなりそうだが、仏教のおおらかさも感じる作品
だ。そのバランス感覚も含めまた1人、日本映画の枠を超え
た新たな才能の開花が観られるものだ。
公開は9月23日より、東京は角川シネマ新宿にてロードショ
ウとなる。

この週は他に
『問いかける焦土』“Lektionen in Finsternis”
(2012年1月紹介『忘れられた夢の記憶』などのヴェルナー
・ヘルツォーク監督で、1992年に発表された湾岸戦争が背景
のドキュメンタリー。基は前年の戦争で破壊放火された油井
の消火活動を記録するものだったようだが、そこに監督は人
類によって破壊される地球の未来を見つめる。人類が創造し
た都市と、業火の燃え盛るまるで異惑星のような風景とが、
監督本人がSFのようだと語る摩訶不思議な映像を作り上げ
ている。以前にNHKで放送されたこともあるようだが、そ
の際には肝心のシーンがカットされていたとのこと。今回は
初めてその全貌が一般公開される。東京では10月7日〜27日
に新宿K's cinemaで開催「ヘルツォーク特集2017」の中で
上映され、以降全国順次ロードショウ。)
『HiGH&LOW THE MOVIE 2 END OF SKY』
(EXILE HIROの企画プロデュースで2016年公開された作品の
続き。前作は観ていないが、若者たちが取り仕切る暴力に満
ちた街区を舞台に、内での抗争と外からの敵には団結して対
抗する姿が描かれる。街区の名前は構想するグループの頭文
字からSWORDと名付けられているが、それが「スウォード」

[5]続きを読む

08月20日(日)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る