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On the Production
by 井口健二
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■美しい星、ろくでなし、キングコング髑髏島の巨神
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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『美しい星』
原作は1970年11月に壮絶な死を遂げた作家・三島由紀夫が、
1962年に雑誌連載で発表した長編小説。その映画化に2012年
日本アカデミー賞優秀監督賞を受賞した吉田大八監督が挑戦
した。
登場するのは、夫妻とフリーターの息子に大学生の娘の4人
家族の一家。夫は気象予報士でニュース番組に出演して人気
もあるようだ。その夫が不倫後の帰路で車ごと光に包まれ、
気付くと郊外の田圃で空から落下したような車内にいた。
一方、バイク便で都内を疾走する息子は乗用車と事故りそう
になり、猛然と追跡した息子はその車に乗っていた国会議員
の秘書から事務所を訪ねるように誘われる。さらに高揚した
気分でプラネタリウムに行った彼はある体験をする。
そして娘は、美しい容姿で大学では浮いた雰囲気だが、ある
日、帰り道で聞いた路上ライヴに心を惹かれ、「金星」と題
されたその歌のCDを購入する。さらにその歌に誘われるよ
うに金沢を訪れ、海岸で空飛ぶ円盤に遭遇する。
こうしてそれぞれが火星人、水星人、金星人に覚醒した家族
は、それぞれの使命を果たすべく行動を開始するが…。
出演は、2016年9月題名紹介『お父さんと伊藤さん』などの
リリー・フランキー、2013年4月紹介『俺俺』などの亀梨和
也、2015年11月1日「東京国際映画祭」紹介『残穢』などの
橋本愛、2013年12月紹介『小さいおうち』などの中嶋朋子。
他に佐々木蔵之介らが脇を固めている。
脚本も手掛けた吉田監督は、30余年前に原作を読んで以来、
自らの手で映画化することが夢だったそうだ。だがそれは、
それ以前に大島渚監督らも抱きながら実現しなかったもの。
そのチャンスが巡ってきた。
しかし原作発表から55年が過ぎ、もちろん原作当時の時代設
定のままでの映画化も可能ではあったが、それでは足りない
と監督は考える。そこで時代を現代に移し替える大胆な脚色
が施されたが、その作業は容易ではなかった。
実際監督は、三島が現代に生きていたらどう描くかを念頭に
脚色したと言っているが、正直に言って僕は、三島だったら
こうは描かなかったと考える。しかし本作は三島の思想を活
かしつつ、見事に映画として成立させているものだ。
これこそが文字通りの「換骨奪胎」と言える作品だろう。そ
の他、様々な微妙な点もクリアしながら、エンターテインメ
ントとして成功させている。また敢えて3/11=福島原発に
踏み込まなかった点も評価したいところだ。
これなら原作の読者も納得させられる映画化だと思える。
公開5月26日より、全国ロードショウとなる。

『ろくでなし』
2016年6月紹介『クズとブスとゲス』の奥田庸介脚本・監督
による新作。
登場するのは地方から上京して来た男と、都会の裏社会で生
き抜いてきた男。そんな2人の男が渋谷のクラブで出会い、
同じクラブで働く女性を巡って様々な裏社会の出来事に遭遇
する。
上京してきた男はめっぽう喧嘩が強く、もう1人の男は裏社
会での身のこなし方を心得ている。そんな男たちが裏社会に
落ちてしまった姉妹と共に都会の裏社会を生き抜いて行く。
そこには犯罪も絡むが、それなりの決着にはなる。
2016年作と同様のかなりやばい裏社会の状況を描いた作品だ
が、監督は何処かで人間を信頼しているのかな。本作もそん
な微かに感じられる温かさが観客にも心地良さを与えてくれ
る。そんな作品になっている。
出演は、2016年1月紹介『華魂 幻影』などの大西信満と、
『クズと…』にも出演の渋川清彦、それにベテランの大和田
獏。さらにオーディションで選ばれた遠藤祐美と上原実矩、
2015年の東京国際映画祭で上映された『ケンとカズ』でカズ

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02月26日(日)
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