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On the Production
by 井口健二
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■虐殺器官、パッセンジャー
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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『虐殺器官』
2015年の10月と11月に連続公開された『屍者の帝国』『ハー
モニー』に続く伊藤計劃の原作をアニメーション映像化する
「Project Itoh」3部作の第3作。
世界中の紛争地帯で特殊任務に当たる米軍部隊の大尉を語り
手として、その紛争の陰に潜む存在を追跡する任務を描く。
そこには言語学を主な手段として人間の本性を呼び起こし、
人類を虐殺マシンへと変貌させる男がいた。
脚本と監督は、2014年『機動戦士ガンダムUC』などのコンテ
を担当してきた村瀬修功。テレビアニメでは監督作品もある
ようだが、劇場作品は監督デビュー作のようだ。
キャラクター原案は3部作の全作を手掛けるredjuice。声優
は中村悠一、三上哲、梶裕貴、石川界人、大塚明夫らが担当
している。
実は「Project Itoh」の前の2作も観たが、2013年『ハル』
の牧原亮太郎と、2013年10月紹介『寫眞館』のなかむらたか
し&2006年11月紹介『鉄コン筋クリート』のマイクル・アリ
アス監督が手掛けたそれらは、アニメーションとしては優秀
かもしれないが、物語は舌足らずで不満だった。
それはまあ、原作の読者には理解できるのかもしれないが、
一般の観客は無視したような、独り善がり(第2作の監督は
2人だが)の作品にも見えた。
それに対して本作は、物語もしっかりと伝えられているし、
SF的なギミックもたっぷりで原作のファンだけでなく一般
の観客にもアピールできる作品と言える。
ただし根本のSFの部分はかなり深遠で、まあそれは聞き流
しても構わないものではあるのかもしれないが、じっくり観
るとさすがに評判の高い原作だと思わせる。その点を監督も
良く理解して描いている点も見事な作品だ。
もっともその部分をしっかり語っているために、却ってSF
的なギミックの部分が浮いて感じるのは痛し痒しで、これな
らSFにしなくても良かったのではないかとも思える。
特に近年、『007』や『ミッション:インポッシブル』が
何かというと衛星兵器のような近SF的題材を多くしている
のを観ていると、この作品からは敢えてSF的なギミックを
外して勝負して欲しかったようにも感じた。
多分それは原作のファンからは批判を浴びるのだろうが、本
作の本質はSFの部分ではないことが、この作品を観ていて
強く感じられたものだ。原作者の夭逝を惜しむ気持ちを強く
する、そんな想いのする作品だ。
公開は2月3日より、全国ロードショウとなっている。
『パッセンジャー』“Passengers”
2014年8月紹介『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』な
どのクリス・プラットと、2012年『世界にひとつのプレイブ
ック』でオスカー受賞のジェニファー・ローレンス共演で、
大宇宙に取り残された男女の姿を描いたドラマ作品。
舞台は大宇宙を半光速で飛行する巨大宇宙船。前方にはエネ
ルギーフィールドを展開して障害物を排除していたが、航路
上で小惑星帯に遭遇し、迂回進路は採ったものの一つに衝突
してしまう。そして生じた不具合が船内で悲劇を生み出す。
その宇宙船の航路は片道120年。5000人の乗客と200余人のク
ルーは全員が冬眠状態でその間を過ごすことになっていた。
ところが衝突で生じた不具合が乗客の1人を覚醒させてしま
う。それは出発から30年、まだ飛行は90年を残していた。
それはつまり、他の乗客が覚醒する前に自身の寿命が尽きて
しまうことを意味していた。そしてその1年後にもう1人が
覚醒し、以後は2人の暮らしとなるが、そこからいろいろな
ドラマが生じて行く。
監督はノルウェー出身で2014年『イミテーション・ゲーム』
などのモルテン・ティルドゥム。脚本と製作総指揮は2012年
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02月05日(日)
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