ID:47635
On the Production
by 井口健二
[459775hit]

■おとなの事情、標的の島 風かたか
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『おとなの事情』“Perfetti sconosciuti”
イタリア映画界のアカデミー賞とされるダヴィッド・ディ・
ドナテッロ賞において作品/脚本のW受賞を果たしたパオロ
・ジェノヴェーゼ監督によるコメディ作品。
物語に登場するのは、月食の夜に幼馴染の家に集まった7人
の男女。それは3組の夫婦と1人の独身者で、その中の1組
の夫婦の家に集まるが、少し遅れた独身者は連れてくるはず
のガールフレンドが風邪で来られなくなったと話す。
それでも持ち寄ったワインや料理でパーティは始まるが、最
初の乾杯の前に当主のシャツにワインが掛かり、夫は着替え
る羽目に陥る。そしてその後で始まった座興のゲームが思わ
ぬ悲喜劇を呼ぶ。
そのゲームは各自の携帯電話をテーブルに置いて、架かって
きた電話はスピーカフォンで皆に聞こえるようにし、届いた
メールは本人以外が読み上げるというのだが、それが各自の
秘密を暴き立ててしまうのだ。
それは人間の本性というか人生の機微みたいなものが見事に
描かれる作品だが…。
出演は、ドナテッロ賞に9回ノミネート3回受賞というジュ
ゼッペ・バッティストン、本作で3度目のノミネートのアン
ナ・フォリエッタ、舞台出身のマルコ・ジャリーニ、監督業
も行っているエドアルド・レオ。
さらに2002年8月紹介『スズメバチ』などのヴァレリオ・マ
スタンドレア、2013年9月紹介『眠れる美女』などのアルバ
・ロヴァケル、2010年4月紹介『パリより愛をこめて』など
のカシア・スムトゥニアク。
いずれも芸達者な現代イタリア映画界を代表する面々が揃っ
ている感じだ。
という作品なのだが、実は最初に観た時には結末で呆気に取
られた。それは何とも唐突な終わり方で、観終えてモヤモヤ
した気分にもなった。実際いくらなんでもこれはないだろう
という終り方だったのだ。
しかしその後にその謎を解く鍵は衣装にあると聞かされて、
それならということで2度目を観に行き、それでようやく得
心した次第だ。でもこれを予備知識なしで観て理解できる観
客がどれほどいるものか。
とは言えこの作品には作品賞が贈られているのだから、イタ
リアの観客は理解できたということなのだろうか。ドラマを
観ているだけでもそれなりに面白くはあるが、一筋縄では行
かない作品だ。
公開は3月18日より、東京は新宿シネマカリテ他にて、全国
順次ロードショウとなる。

『標的の島 風かたか』
2013年7月紹介『標的の村』などの三上智恵監督による最新
作。
2016年6月19日に起きた米軍属による婦女暴行殺人事件に端
を発する抗議行動。その被害者を追悼する県民集会で、名護
市長は「今回も我々は風かたか(防風柵)になれなかった」
と述懐する。
その一方で2013年の防衛大綱に基づいて進められる宮古島、
石垣島などの軍事基地化。そこには中国艦隊の太平洋出撃を
阻止するという名目で、対潜水艦ミサイルの発射基地などの
設営が自衛隊の手で進められている。
因に第2次世界大戦で沖縄は、10万人の帝国陸軍を受け入れ
たが。その結果は守るどころか12万人の民間人の死を招いて
しまった。しかもそこには軍事機密の漏えいを防ぐために、
軍によって死地に追いやられた人も多いという。
そんな歴史も記憶に新しい沖縄で進む戦争への道づくりは沖
縄県民の神経を逆なでしながら着実に進められて行く。さら
に『標的の村』で取り上げられた高江には、1000人を超える
機動隊が動員されて米軍の訓練場が整備されている。
そんな沖縄の基地化の現状と、それに反対する沖縄の人々の
姿が、沖縄現地のテレビ局の手で取材され、描き出される。

[5]続きを読む

01月29日(日)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る