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On the Production
by 井口健二
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■3月のライオン前編/後編
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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『3月のライオン前編』
『3月のライオン後編』
2006年5月紹介『ハチミツとクローバー』などの羽海野チカ
原作による人気コミックスの実写映画化。
主人公は中学生でプロ棋士になったという若者。幼い頃に家
族を交通事故で失い、父親の親友だったプロ棋士の許で育て
られた。しかし高校生になった現在は、ある事情から下町で
1人暮らしをしている。
そんな彼は高校に通ってはいるが学校では昼食も屋上で1人
で食べるなど浮いた存在だ。しかし主人公には彼の存在を理
解して話し掛けてくれる教師もいた。そして放課後は棋士会
館でタイトルを目指す戦いが続いている。
ところがある日の対局で、育ての親に勝ってしまった彼は嫌
悪感に陥り、飲めないアルコールを口にしてしまう。そのた
め路上に倒れていた彼を救ったのは、働きながら隣町で幼い
2人の妹と暮らす女性だった。
そして翌朝、その女性の家で目を覚ました主人公は、初めて
家族の温かさを知ることになる。そんなプロ棋士の若者と、
周囲の人々との生活が描かれて行く。
出演は、神木隆之介、有村架純、倉科カナ。その脇を佐々木
蔵之介、加瀬亮、前田吟、斉木しげる、伊藤英明、豊川悦司
らの錚々たる顔ぶれが固めている。
監督は、2012年6月紹介『るろうに剣心』などの大友啓史。
脚本は大友監督と、2006年10月紹介『TANNKA』を阿木
燿子と共に脚色した岩下悠子、それに2013年に『かしこい狗
は、吠えずに笑う』という作品を脚本、監督した渡部亮平が
共同で執筆した。
表題の通り前後編2部作で公開される作品で、しかも前編の
上映時間が2時間18分、後編が2時間19分というかなり長大
な作品になっている。
それにプロ棋士が主人公の作品では、先に2016年10月16日に
題名紹介の『聖の青春』があったばかりで、いろいろ危惧は
感じていたものだ。そんな気持ちで観始めた前編は、正直に
言って『聖の青春』に被る所が多かった。
ところがそれが後編に入ると展開が一気に変わって、現代社
会に通じる極めてドラマティックな物語になっていた。そこ
には、苛めや核家族化など、正しく現代人が遭遇しているで
あろう現実的な内容が描かれていたのだ。
「事実は小説より奇なり」というのは使い古された言い回し
だが、実話に基づく『聖の青春』に対してフィクションであ
る本作は、作者の思うがままに見事なドラマが構築されてい
る。これこそがフィクションの醍醐味だろう。
公開は、前編が3月18日より、後編は4月22日より、2部作
連続の全国ロードショウとなる。
この週は他に
『話す犬を、放す』
(2012年1月紹介『桃まつり』の中で『最後のタンゴ』とい
う作品を取り上げた熊谷まどかの監督で、昨年のSKIPシティ
国際Dシネマ映画祭のオープニングを飾った作品。物語の背
景となるのはレビー小体型認知症という病気。この病はアル
ツハイマー型に次ぐ認知症の症例だが、その症状では幻視や
幻聴が現れるものだそうだ。そんな病に侵された母親と、演
劇に生きる娘の姿がユーモアを込めた温かい目で語られる。
出演はつみきみほと田島令子。ベテラン2人の演技は安心し
て観ていられるが、実は脚本も手掛けた監督の実母がこの病
だそうで、その近親者を見つめる目が、作品を豊かにしてい
る感じもした。公開は3月11日より、東京は有楽町スバル座
他で全国順次ロードショウ。)
『しゃぼん玉』
(宮崎県椎葉村、平家落人の末裔とされる人々の暮らす村を
舞台に、強盗傷害を繰り返して逃亡の果てに辿り着いた若者
の再生を描いた乃南アサ原作小説に映画化。開幕は衝撃的な
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01月22日(日)
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