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On the Production
by 井口健二
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■ヨーヨー・マと旅するシルクロード
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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『ヨーヨー・マと旅するシルクロード』
“The Music of Strangers”
世界的なチェロの演奏家と、彼が結成した多国籍楽団の姿を
追ったドキュメンタリー。
何度も書いているように僕は音楽には全く疎い者で、そんな
中でヨーヨー・マの名前ぐらいは知っていたが、業績などは
全くの不知だった。従って本作では抒情的な題名もあって、
音楽家が各地で演奏旅行をする映像かな…? という程度の
軽い気持ちで観に行った。
その映画の始まりでは、観光地のような場所で演奏を繰り広
げる様子が映し出され、一層その印象を深くした。ただし、
その演奏では中国の琵琶(ピパ)やスペインのバグパイプな
ど一風変わった楽器も登場するものだが、その中で楽しげに
演奏するヨーヨー・マの姿が如何にもという感じだった。
そしてそこにヨーヨー・マの生い立ちや過去の業績などが重
ねられ、それはモノクロテレビのアーカイヴ映像から家族ら
へのインタヴューなども挿入されて、本人に対する見事な人
物紹介となっている。僕はここで改めて演奏家の人となりを
知ることができた。
という、如何にも如何にもな感じのドキュメンタリー映画の
始まりだったのだが、ここからの展開が観ていて思わず居ず
まいを正してしまうような作品だった。
実は楽団のメムバーというのが、勿論各自はヨーヨー・マの
眼鏡に叶った優秀な演奏家たちだが、それぞれが各地で主に
民族楽器を扱う演奏家。その楽団は元々はヨーヨー・マが伝
統的な音楽と現代音楽の融合を図るという目論みで始めたも
のだった。
ところが、2000年に始まった活動はいきなり試練を迎える。
言うまでもなく2001年9月11日だ。その後の中東に対する逆
風自体は音楽家のメムバーには直接的な影響はないが、それ
によって生じた状況に彼ら自身が無関心ではいられない。こ
うして本作では現在の世界があぶり出されて行く。
その中では、中国人の琵琶奏者が文化大革命を語り、それに
よって後継者もなく消滅寸前だった影絵劇の伴奏楽団を支援
する姿や、当然ながら中東の戦場からの難民キャンプで子供
たちに音楽を教える管楽器奏者など、様々な活動がヨーヨー
・マの楽団に参加したことから派生して行く。
そんな素晴らしい音楽世界が描かれた作品となっている。
なお楽団には、日本人では尺八奏者の男性と打楽器奏者の女
性が参加しているようだが、上述の展開では男性がヨーヨー
・マの人となりを語るインタヴューでしか登場がない。しか
しエンディングでは尺八の演奏がかなりフィーチャーされて
いた。
その映像を観ていて僕らは、平和な日本の現状を噛みしめる
ことができるし、それを守ることの意義も感じることのでき
る作品だった。
公開は3月上旬より、東京は、Bunkamura ル・シネマ、シネ
スイッチ銀座他にて、全国順次ロードショウとなる。
この週は他に
『グッバイエレジー』
(直近では12月25日題名紹介『相棒 劇場版W』などの撮影
も行われた北九州市を舞台に、映画を背景に置く作品。主人
公は絶頂期を過ぎた映画監督で、物語はそんな彼が親友の死
を知って一度は捨てた故郷に帰ってくるところから始まる。
そこには映画などの彼らの青春の思い出が残っているが…。
昭和を想わせる映画館の地上げ問題など、ノスタルジーと現
実の交錯する物語が展開される。出演は大杉漣、石野真子、
藤吉久美子、吉田栄作。始めに書いた作品は東京のフェイク
として使われたものだが、本作では北九州市そのものが舞台
になっている。その地を僕は何度か訪れており、門司港駅な
どには懐かしさも感じられた。公開は3月25日より、東京は
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01月08日(日)
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