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On the Production
by 井口健二
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■シークレット・オブ・モンスター、ある戦争、デスノート Light up the NEW world
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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『シークレット・オブ・モンスター』
“The Childhood of a Leader”
2012年11月紹介『マーサ、あるいはマーシー・メイ』などに
出演の俳優ブラディ・コーベットによる初長編監督作品で、
脚本も執筆したコーベットは、2015年のヴェネツィア映画祭
にて新人監督賞及びオリゾンティ部門の脚本賞を受賞した。
物語の背景は1919年。登場するのは世界大戦の休戦を受ける
パリ講和会議に派遣されたアメリカ代表団一員の家族。妻が
フランス語に堪能なため夫が代表団に加わった一家は、幼い
息子と共にパリ郊外の邸宅に滞在することになる。
ところがその直後から息子が奇妙な行動をとり始める。それ
は単に反抗期と言えるものではなかった。そしてその行動は
徐々にエスカレートして行き…。
出演は、2012年2月紹介『アーティスト』でオスカー候補に
なったベレニス・ベジョ、2016年5月紹介『ハイ・ライズ』
などのステイシー・マーティン、2010年4月紹介『タイタン
の戦い』などのリーアム・カニンガム。それに、2013年2月
紹介『コズモポリス』などのロバート・パティンスンと、新
人のトム・スウィート。
また本作の音楽は、元ウォーカー・ブラザースのスコット・
ウォーカーが担当しているが、映画の始まりから引き摺り込
まれるような音楽演出で、さらに重厚かつアヴァンギャルド
な楽曲は本作の緊張感を見事に高める効果を上げている。
コーベットは脚本について、フランスの哲学者ジャン=ポー
ル・サルトルが著した同じ英語題名の短編小説にインスパイ
アされたと語っているものだが、その一方で『フランス軍中
尉の女』の原作者で知られるジョン・ファウルズの長編小説
“The Magus”からも想を得たとしている。
このファウルズの小説は1968年に映画化されているが、その
映画作品はウディ・アレンが、「生まれ変わっても同じ人生
を歩みたいと思うが、この映画だけは二度と観たくない」と
語っているものだそうだ。
そしてコーベットが2008年9月紹介『ファニー・ゲームU.
S.A.』にも出ていたと書けば、本作の雰囲気は大体理解し
て貰えると思う。それは子供の態度が極めて不愉快に描かれ
ているものだ。しかしそれが独裁者を育む様子は正にそうだ
と思わせる演出になっている。
しかもこのような育ち方をしている子供が、現代には数多く
存在しているのでは…?と思わせる辺りも、本作の不気味さ
を強くさせる。その現実から目を背けてはいけない、そんな
気持ちにもさせてくれる作品だ。
因に主人公の少年は1919年の時点で10歳前後と思われるが、
その世代に著名な独裁者はいないようだ。ただフィクション
ではジョージ・オーウェル『1984』の支配者が該当する
かもしれないが、本作はそれとは無関係な作品だと思う。
過去を描いた作品ではなく、現代に問題提起する作品だ。
公開は11月より、東京はTOHOシネマズシャンテ他で、ロード
ショウとなる。
『ある戦争』“Krigen”
2011年3月紹介『光のほうへ』の脚本家でもあるトビアス・
リンホルムによる監督第3作で、今年のアメリカアカデミー
賞外国語映画部門の候補になったデンマーク映画。
登場するのは、デンマークからアフガニスタンに派遣されて
いる陸軍部隊の部隊長。派遣の任務は民間人をタリバンの脅
威から守ることだが、巡回中に兵士が地雷に触れて亡くなる
こともまれではない。
そんな部隊長は毎週末に母国の自宅に電話を掛ける。その電
話で妻からは長男の行動がおかしいと訴えられるが、それは
父親の不在が要因であることも明らかだった。それでも任務
のために帰国もままならない。
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09月04日(日)
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