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On the Production
by 井口健二
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■カノン、エヴォリューション、アルジェの戦い
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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『カノン』
2012年2月紹介『僕等がいた』などの比嘉愛未、2008年5月
紹介『落語娘』などのミムラ、7月24日題名紹介『いきなり
先生になったボクが彼女に恋をした』などの佐々木希が三姉
妹を演じ、鈴木保奈美、多岐川裕美、古村比呂、島田陽子が
脇を固める女性映画。
三姉妹は金沢で老舗料亭を営む祖母に育てられた。その祖母
が亡くなり葬儀も滞りなく済むが、その遺言状には意外な事
実が記されていた。それは数年前に死んだと知らされていた
実母が生きているという事だった。
しかしそこに記された介護施設を訪ねた三姉妹は、長年の飲
酒で痴ほうになり、実の娘の記憶もない母親の姿に呆然とす
る。その後はそれぞれの生活に戻る三姉妹だったが、彼女た
ちもまた人生の岐路に立たされていた。
監督は2008年2月紹介『チェスト!』などの雑賀俊郎、脚本
も同作を手掛けた登坂恵里香が担当している。
共演には「仮面ライダーW(ダブル)」の桐山漣と、2013年
8月紹介『スクールガール・コンプレックス−放送部篇−』
などの長谷川朝晴。
物語は、アルコール依存症からDV(モラルハラスメント)
まで、現代女性の置かれている危険な状況が次々に提示され
るもので、自分が男性の目で観ているとかなり居心地の悪い
作品にもなっている。
でもこれが現実の社会の何処かで実際にあり得る姿なのだろ
うし、特に誇張されているとも思えない。それをしっかりと
見据えることが男性の観客にも求められることなのだろう。
そんな問題意識はしっかりと描かれた作品と言える。
その一方で僕が注目したのは、本作の最後に描かれるピアノ
演奏のシーンだ。ここでは題名にもなっている「パッヘルベ
ルのカノン」が演奏されるのだが、ここでの展開には2014年
2月紹介『僕がジョンと呼ばれるまで』が思い出された。
その作品では、東北大学加齢医学研究所センター長川島隆太
教授が提唱する痴ほう症に対する音楽療法が、アメリカで実
践され効果を上げている実例として報告されているのだが。
本作のクライマックスには正にそれが描かれていたのだ。
本作の脚本家がその事実を知ってこの脚本を執筆したか否か
は不明で、単に物語的な効果を狙って描いただけかもしれな
いが、本作の展開にはそんな医学的な裏打ちがあることも述
べておきたいものだ。
公開は10月1日より石川県、富山県の各劇場と、東京は角川
シネマ新宿他で、全国順次ロードショウとなる。

『エヴォリューション』“Évolution”
2010年3月紹介『エンター・ザ・ボイド』などのギャスパー
・ノエ監督の公私に渡るパートナーで、同作の脚本にも協力
した2004年『エコール』などのルシール・アザリロヴィック
が、11年ぶりに手掛けた長編監督作品。
海岸で少年たちが遊んでる。その1人が海中に潜り、遺体と
思しきものを見る。しかし少年が家に帰り、家人の女性にそ
の話をしても取り合ってもらえない。そして女性は少年に薬
を飲ませ、ベッドで眠るように指示する。
その女性を少年は母と呼ぶが、少年自身がそれには疑問を感
じているようだ。やがて少年は研究施設のような部屋に連れ
て行かれ、何やら医療処置を施される。そしてその部屋で若
い看護士の女性と親しくなるが…。
出演は、オーディションで選ばれたマックス・ブラバンと、
昨年のフランス映画祭で上映された『エール!』に出ていた
ロクサーヌ・デュラン、2012年4月紹介『キリマンジャロの
雪』などのジュリー=マリー・パルマンティエ。
脚本はアザリロヴィック監督と、2015年に数多くの映画祭で
受賞を果たした“Sangailės vasara”という作品の女性監督

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08月28日(日)
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