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On the Production
by 井口健二
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■淵に立つ、世界一キライなあなたに、バニラボーイ トゥモロー・イズ・アナザー・デイ
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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『淵に立つ』
2015年10月紹介『さようなら』などの深田晃司監督による新
作で、今年のカンヌ国際映画祭「ある視点」部門で審査員賞
を受賞した作品。
下町の町工場にワイシャツに黒ズボン姿の男が訪ねてくる。
その男は工場主の古い知り合いらしく、工場主は彼の行き場
が決まるまで工場で雇うことにする。しかし工場主の妻はそ
の男のことは何も知らなかったようだ。そして工場主の夫妻
にはオルガンを練習する幼い娘がいた。
そんなちょっとギクシャクした男の登場だったが、男はオル
ガンを巧みに演奏して娘の関心を呼び、徐々に一家の中に溶
け込んで行く。こうして男は、一家の休日には娘の要望で川
遊びに同行するまでになって行くが…。そこで男は工場主に
荒々しい本性を垣間見せたりもする。
そしてこの男の存在が、平和だった家族を徐々に崩壊させて
行く。
出演は、浅野忠信、古舘寛治、筒井真理子、篠川桃音と真広
佳奈。他に、太賀、三浦貴大らが脇を固めている。
深田監督の作品では、2010年11月02日付「第23回東京国際映
画祭」で『歓待』という作品を紹介しているが、本作はその
元になったアイデアだそうで、確かに下町の印刷工場に謎の
男が現れる2010年作とシチュエーションやその後の展開など
も似ているものだ。
ただし『歓待』はかなり大人数の集団劇だったのに対して、
本作は夫婦と娘の3人家族に男が入ってくる。従って人数が
少ない分、その物語の密度はかなり高い。しかもそこからの
終盤の展開は正に衝撃的なものになっていた。
因に監督の描きたかったテーマは、安定した集団への異分子
の混入だそうで、そのテーマは2本の作品に共通して強烈な
衝撃を与えるものになっている。特に本作では、そのテーマ
性は明確だろう。
実は、僕自身には『歓待』を観た時に超自然的な匂いも感じ
られて、侵入者である人物には悪魔的なものも感じていた。
そのためそこにはファンタシーの解釈も成り立つとも思って
いたのだが…、本作ではそれは払拭されていた。
従って本作では、『歓待』以上に人間の業のようなものが描
かれ、それは悪魔以上に恐ろしいものであるという現実が突
きつけられる。ただし本作では、それが明確な事実としては
描かれず、あくまで観客の解釈というのも恐ろしい。
そう思って観ている観客こそが、物語の異分子なのだ。
公開は10月上旬より、東京は有楽町スバル座他で、全国ロー
ドショウとなる。

『世界一キライなあなたに』“Me Before You”
2015年7月紹介『ターミネーター:ジェニシス』でサラ・コ
ナーを演じたエミリア・クラークの主演で、困難に立ち向か
う若い女性を描いた作品。
主人公は、山の上にお城の見えるイギリスの田舎町に暮らす
26歳の女性。6年間勤めていたカフェが閉店して収入が無く
なり、両親との暮らしが窮地に陥る。そこで紹介されたのは
お城のそばの邸宅に住む男性の介護だった。
それはベテランの介護士との共同作業で、肉体的な困難など
はさほどなかったが、突然の事故で身体の自由を奪われた元
スポーツマン男性の気性は気まぐれで、彼女の善意の行為も
誤解されぶつかってしまうことが度々だった。
それでもめげることのない主人公は、徐々に男性の心を開い
て行くが…。
共演は、2012年6月紹介『スノーホワイト』などのサム・フ
ランクリン。他に、2012年12月紹介『アルバート氏の人生』
などのジャネット・マクティア、前回題名紹介『ゴーストバ
スターズ』にも出演のチャールズ・ダンスらが脇を固めてい
る。
脚本は、日本を含む世界40か国以上に翻訳されているという

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07月24日(日)
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