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On the Production
by 井口健二
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■中国現代映画特集2016(3Dシネマ 京劇〜覇王別姫〜、河、少年バビロン、心迷宮)
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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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「中国現代映画特集2016」
小映画祭とも言えそうな上映会が上海市電影発行放映行業
協会と東京国際映画祭などの共催で行われた。開会式には、
駐日中国大使館の公使やバングラディシュから帰国したばか
りの外務副大臣も参列する本格的なものだったが、会場に取
材に来ていたのは中国メディアばかりで、何故か日本のマス
コミには無視されたようだ。
以下に上映された4作品を紹介する。
『3Dシネマ 京劇〜覇王別姫〜』“霸王別姫 3D”
チェン・カイコー監督の1993年作品でも知られる中国京劇の
芝居を3D映像+ドルビーATMOSの音響で収録した作品。
時代は今から2200年ほど昔の秦代末期。戦乱の続く中国では
漢と楚が最後の覇権を争っていた。そんな中、楚の王宮は漢
軍に攻め立てられていたが、その防備は容易く破れず、遠征
の漢軍に疲弊の色が見え始める。
そこに漢の将軍が寝返ってきたという知らせが届く。しかも
その将軍は、今こそ打って出るべきと楚の大王を説得する。
それに対し以前からの将軍たちは時期尚早と諌め、王妃も大
王を説得しようとするのだが…。
奸計に嵌った大王は王妃も伴って出陣。しかし漢軍深くに攻
め入った大王は孤立し、逆に敵軍に包囲されてしまう。そし
て自国からの援軍を待つ内に徐々に戦況は悪化し、周囲から
思いもよらぬ歌声が聞こえてくる。
出演は、中国一級俳優の称号を持つ京劇スターのシャン・チ
ャンロン(尚長栄)と、やはり一級俳優の称号を持つ若手の
シー・イーホン(史依弘)。監督は、2010年上海万博開・閉
会式の総監督も務めたトン・ジュンジェ(滕俊杰)が担当し
た。
物語は京劇の芝居そのもので、出演俳優の恋物語などはない
が、京劇は演者の衣装そのものが立体的で3D映像には最適
な題材と言える。しかも本作では、セットもスタジオに組ま
れた奥行きのあるもので、そこに兵士らが縦に整列している
様などは、3D感も抜群だった。
それに本作では、水墨画のような背景画もコンヴァージョン
3D化されており、正しく最新技術での3D作品と言える。
つまりこれは舞台では絶対に観られない映画ならではの作品
と言えるものなのだ。
その上に本作では、音響設計がドルビーATMOSで行われたと
いうことで、実は今回上映された会場はドルビー5.1の設備
だったが、本来の音響での「四面楚歌」はどんなものだった
のか、それは一度聞いてみたくなる気分だった。
本作の一般公開は予定されていないようだが、会場では表紙
が3Dの日本版パンフレットも配布されていて、これは是非
とも日本公開を期待したくなった。
以前よりシネマ歌舞伎や劇団☆新感線によるゲキ×シネなど
を観て、その良さは何度も紹介してきたが、そうは言っても
3Dのこの迫力にはかなわない。日本の作品でもこのような
感覚を味わいたいものだ。
『河』“河 Gtsngbo/གཙང་པོ། ”
昨年の第28回東京国際映画祭ワールド・フォーカス部門にも
出品されたチベット人監督による作品。
舞台はチベット高原の片隅の草原地帯。登場するのはまだい
たいけない少女とその両親。母親の胎内に次の子供が宿り、
少女は乳離れを求められている。しかしまだそれを理解でき
る年齢でもない。
一方、少女の祖父は村から聖人と崇められているような人物
だが、少女の父親である息子には確執があるようだ。そんな
祖父が病となり少女と父親は河を渡って見舞に行くが、すで
に村人の見舞いの行列ができていた。
その様子に何もせずに帰ってしまう父親だったが…。そんな
チベット高原の片隅での出来事が、淡々とした描写で綴られ
て行く。
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07月10日(日)
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