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On the Production
by 井口健二
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■TATSUMI、うまれる2、ブラック・ハッカー、マエストロ!
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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『TATSUMI マンガに革命を起こした男』“Tatusmi”
2011年10月31日付「第24回東京国際映画祭」で紹介した作品
がようやく日本でも一般公開されることになり、マスコミ試
写が行われた。因に監督のエリック・クーは今年の東京国際
映画祭で部門審査員を務めることになっており、映画祭での
特別上映も行われるものだ。
作品は1957年に劇画という名称を考案し、「劇画の父」と呼
ばれる日本の漫画家辰巳ヨシヒロを題材にしたもの。2008年
に出版された辰巳の自伝的作品『劇画漂流』を主軸に置き、
敗戦後の日本の風俗を描いた5本の短編劇画と共にアニメー
ションで映像化されている。
その冒頭では「手塚治虫・七回忌」の模様が描かれ、辰巳が
師と仰ぐ手塚氏への憧憬が表明される。その会場を辰巳は途
中で退席するが、それは手塚氏亡き後の日本漫画界の行く末
を案じたからのようだ。実は僕もこの会に出席していたが、
僕はそのようなことを到底考えていなかった。
そして映画は、広島の原爆に関る短編作品『地獄/HELL』の
アニメーションに繋げられる。この作品で辰巳と監督は人間
の業について描き切るが、それは原爆が残した影を巡る凄ま
じくも切ない物語だ。そしてこの作品だけでも辰巳を再評価
しなくてはいけない気持ちにさせられた。
他に映画では、『いとしのモンキー/BELOVED MONKEY』『男
一発/JUST A MAN』『はいってます/OCCUPIED』『グッド・
バイ/GOOD-BYE』が映像化されているが、いずれもいろいろ
な局面での男の生き様のようなものが描かれており、それぞ
れが男の自分にはガツンとくる作品だった。
監督と脚本も手掛けたエリック・クーは、1997年のカンヌ映
画祭ある視点部門と、2008年のコンペティション部門にも招
待されたシンガポールの俊英で、本作では2011年のある視点
部門に再び招待された。因に同年の東京国際映画祭ではアジ
アの風部門で上映され、スペャルメンションに輝いている。
作品の国籍はシンガポールになっているが、作品中の言語は
日本語で、そのナレーションと主要な登場人物6役の声優を
別所哲也が担当している。他に原作者の辰巳ヨシヒロも登場
する。
実は3年前の映画祭で鑑賞した時には、『地獄/HELL』の印
象が強烈に残って、他の作品や本編の部分はほとんど吹き飛
んでしまっていた。それで今回は再度鑑賞したが、作品に対
する印象はあまり変わらなかった。
冒頭の作品は依然として強烈な印象で、他の作品も見事だが
それを超えることは監督も意図していないようにも思える。
ただし監督の発言によると、ヨーロッパの上映では『はいっ
てます/OCCUPIED』がかなり受けたそうだ。
公開は11月15日から、東京は角川シネマ新宿ほかで全国順次
ロードショウとなる。
『うまれる ずっと、いっしょ』
2010年9月紹介『うまれる』の豪田トモ監督が、子供の誕生
だけではない人間の営みを記録したドキュメンタリー。
前作からは障害を持つ子供を育てる一組の家族だけが続けて
登場し、重度の障害を持ちながらも両親の愛情に支えられて
医師の常識を超える成長を続けている姿が記録されている。
それは人の営みをも超えた崇高な姿にも見えた。
その他にはつい最近に長年連れ添った妻を亡くした夫と、血
の繋がらない息子との生活の中で新たに実子の誕生を迎える
男性の姿も描かれる。この内の前者に関しては、一般的な生
活をしていれば半数の人間にあり得る事だが…。
後者では、かなりドラマティックな展開が丁寧な取材で記録
されている。しかもその対象の一部が幼い子供というのは、
児童心理学の面からも相当に慎重な取材が求められたと思う
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10月12日(日)
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