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On the Production
by 井口健二
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■6才のボクが、大人になるまで。ダムネーション
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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『6才のボクが、大人になるまで。』“Boyhood”
2006年9月紹介『スキャナー・ダークリー』などのリチャー
ド・リンクレーター監督が、制作に12年を費やして描いた少
年の成長ドラマ。
主人公は、物語の始まりで6歳の少年。テキサスの田舎町で
母親と姉と共に暮らしていたが、突然母親がヒューストンの
お祖母ちゃんの家に引っ越すと言い出す。それは母親がもっ
と収入の良い仕事に就けるよう大学で勉強するためだった。
こうして一家はあたふたと出発する。
そんな主人公には父親もいるが、アラスカかどっかに行った
ままで母親とはすでに離婚しているようだ。しかし突然お祖
母ちゃん家にやってきてキャンプに誘ってくれたりもする。
一方、母親は大学で出会った教授と再婚を果たす。その教授
にも2人の子供がいて4人の子供たちは仲良くなるが…
両親の離婚に引っ越し、さらには上昇志向の強い母親の進学
と再婚。そして新しい家族との交流や軋轢など、正に家族に
振り回される少年の飛んでもない成長期が描かれる。そこに
大統領選挙なども絡んで、これはアメリカの縮図と言っても
良い物語なのかもしれない。
出演は、6歳から18歳まで本作の主人公を演じたエラー・コ
ルトレーン。母親役には今年2月紹介『チャールズ・スワン
三世の頭ン中』などのパトリシア・アークェット、時々現れ
る父親役に2013年4月紹介『フッテージ』などのイーサン・
ホーク、そして主人公の姉役に監督の娘のローレライ・リン
クレーター。
リンクレーター監督は1993年の『恋人たちの距離』に始まる
3部作を2013年『ビフォア・ミッドナイト』まで20年掛けて
完成させているが、それらはその時々に物語が創作されたも
のだろう。それに対して本作は当初からの長期計画で、ある
程度の展開は想定されていたと思われる。
しかしそれが監督の思惑通りに進んだのかな。特に2008年の
大統領選挙戦までのそれなりにハイテンションな展開から、
その後は一気に落ち着いた作風になっているのは気になった
ところだ。勿論主人公がアーティスティックな指向になった
ことが原因であることは認めるが…
この監督の心境の変化が、民主党大統領への期待と新大統領
に裏切られたことへの挫折に起因するようにも思えて、僕に
は何となく痛々しくも感じられた。本作はベルリン映画祭で
銀熊賞(監督賞)を受賞しているが、果たしてそれは監督の意
に沿うものだったのだろうか?
公開は11月14日からロードショウが予定されている。
『ダムネーション』“DamNation”
アメリカ合衆国の全土に7,5000基以上あると言われる河川を
堰き止めるダム。そのダムを環境破壊の元凶として除去する
ことを目指す人々の活動を描いたドキュメンタリー作品。
作品の冒頭で、コロラド川フーヴァーダム竣工当時のものと
思われるダム建設を称える米大統領の演説の音声が流れる。
しかしそのダムが、実際にはその建設当時の目的とされた水
力発電や治水、灌漑などの役にたっておらず、さらには重大
な環境破壊を引き起こしている。
そんな現実を捉えて合衆国では、すでに無用とされたダムを
除去する事業が進められている。とは言え、既得権益の塊の
ようなダムの除去が一朝一夕に進んだ訳はなく、そこに至る
歴史や、現状ではそのアピールのためのカヌーでの川下りや
ダムにグラフィティを描く活動なども紹介される。
それはまあ地道な活動というか、一部には法律に触れるもの
もあるものだが、そんな行為が徐々に人々の意識に変革を与
えて行ったのだ。
そしてその結果が本作に繋がるものだが、その作品の見どこ
ろは、何と言っても迫力あるダム破壊の映像。その映像には
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10月05日(日)
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