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On the Production
by 井口健二
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■恋につきもの、パズル、ロボコップ
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
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『恋につきもの』
昨年12月紹介『神奈川芸術大学映像科研究室』に続く東京藝
術大学大学院映像研究科映画専攻制作・配給による作品。
前の紹介は修了制作の長編作品だったが、すでに気鋭の映画
作家も輩出している同映画専攻では、毎年オムニバス作品も
発表しているのだそうで、本作はその最新作になる。
内容は、同性愛や性同一性障害などセクシャルマイノリティ
を主人公にした作品を発表している漫画家・ふみふみこ原作
によるもので、その3篇が映像化されている。ただし選ばれ
ているのは、それプラスちょっとファンタスティックな作品
が中心のようだ。
「いばらのばら」は、感情が高ぶると顔や手足から刺が生え
てくる少女と、皮膚の一部が鉱石になっている少女の物語。
幼馴染の2人は同じ学校に通っているが、前者は美少女で男
子生徒の注目を浴び、後者はその陰に隠れた存在だ。そんな
2人の関係が男子生徒の出現で微妙に変り始める。
出演は2013年4月紹介『絶叫学級』などの松本花奈と2007年
『兎のダンス』などの伊藤沙莉、それに2012年2月紹介『ト
テチータ・チキチータ』などの葉山奨之。脚本と監督は、す
でに2010年『イブの溜息』などを発表している桝井大地。
「豆腐の家」は、豆腐のように真っ白な外観の家に暮らす夫
婦の物語。夫は自動車の整備工場で働いているが、専業主婦
らしい妻はちょっとエキセントリックで、夜も会話が絶えず
に夫は寝不足で仕事と精神にも支障が出ている。そして妻は
「家が腐り始めた」と言い出す。
出演は「装苑」などのモデルで本作が女優デビューの谷口蘭
と2012年8月紹介『莫逆家族』などの石田法嗣。脚本と監督
は、2008年『夜来風雨の声』という作品が韓国での映画祭で
批評家賞を受賞している五十嵐耕平。
「恋につきもの」は、交通事故で亡くなった生前は自動車教
習所の指導員だった女性の幽霊が主人公。彼女は死の直前に
別れを告げられた指導員仲間の男性への思いが断ち切れず現
世を彷徨っていた。そしてついに合宿教習に来たイケメンの
生徒に乗り移り真意を確かめようとするが…
出演は2013年3月紹介『モンスター』などの趣里と、2009年
5月紹介『幼獣マメシバ』などの高橋洋、それに2013年12月
紹介『仮面ティーチャー』などのノ俊太郎。本作のみ脚本と
監督が別々で脚本は森崎洸貴、監督は一見正隆。
物語は、セクシャルマイノリティがテーマという割にはその
部分は最近の映画に有り勝ちな感じもして、むしろ主人公が
クリーチャーだったり、幽霊話だったり、どちらかと言うと
ファンタスティックな要素が印象に残る作品だった。
それだけでも僕的にはOKだったが、本作を観ていて3篇の
トーンが見事に統一されていることにも感心した。本作では
上記のように3篇の脚本と監督はそれぞれ違うのだが、その
まるで同じ監督の作品のように見える。
僕は原作を読んでいないが、これは恐らく原作の持つ雰囲気
が忠実に再現されていると考えて良いのだろう。3人の監督
はそれぞれ実績もあるが、彼らが独りよがりにならず原作に
対していることが好ましくも感じられた。
監督の個性も大事だが、こういう作品もしっかり撮れること
が必要なようにも思える作品だった。
公開は4月12日より、東京はシネマート新宿ほか全国順次で
行われる。

『パズル』
2005年8月に紹介した『あそこの席』『@ベイビーメール』
などの山田悠介の原作を、2012年3月紹介『先生を流産させ
る会』の内藤瑛亮監督が映画化した作品。
映画の舞台はとある郊外の高校。その校舎の屋上から1人の
女子高生が飛び降るシーンで映画は始まる。

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03月02日(日)
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