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On the Production
by 井口健二
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■自由と壁とヒップホップ、セッションズ、ザ・イースト、ゆるせない逢いたい、グランド・イリュージョン
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
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『自由と壁とヒップホップ』“Slingshot Hip Hop”
ニューヨーク大学大学院で芸術学を専攻、在学中よりアート
作品を発表して、2005年サンダンス映画祭に出品された短編
作品が評価されたというアラブ系アメリカ人アーティストの
ジャッキー・リーム・サッローム監督による故郷パレスチナ
で取材された長編ドキュメンタリー。
監督は、2002年にパレスチナ史上初と言われるピップホップ
グループ“DAM”の存在を知ったそうだ。そのグループは
イスラエル領内のパレスチナ人地区で誕生し、占領や貧困、
さらにはアラブ圏特有のジェンダー差別などで生きる意味を
見いだせない若者たちに発言することの価値を教え、勇気と
夢を与え続けている。
そして彼らに触発された若者たちは抑圧された中でラップの
言葉を紡ぎ、インターネットなどを通じて情報を発信する。
そんなパレスチナのヒップホップの現状が描かれる。ただし
本作は2008年に発表されたもので、多少の情報の遅れなどは
あるのかもしれないが、描かれるのはほとんど僕らが知らな
かったパレスチナの若者たちの実像だ。
そんなパレスチナでは、イスラエル建国以前の1947年に住む
土地を追われた人々と、その際にイスラエル領内に留まった
人々との間で確執があったようだ。DAMはそのイスラエル
領内に留まった人々の中で誕生し、確執を乗り越えて人々に
連帯を呼びかける。またジェンダー差別で歌うことを禁じら
れた女性歌手も支援する。
そしてDAMはヨルダン川西岸地区に最高のステージを用意
し、パレスチナのヒップホップグループが一堂に会する合同
ライヴを計画するのだが。ガザ地区のグループがそのステー
ジにたどり着くためには、いくつのも分離壁や検問所を通り
抜けなければならなかった。果たしてその合同ライヴは実現
するか…。
映画の中ではイスラエル軍の爆撃を受けたパレスチナ人居住
区のアパートの惨状なども紹介されるが、それはパレスチナ
の映像として僕らが知り得ていたものだ。しかしそんな中で
多数のヒップホップグループが存在し、彼らが情報を発信し
続けていることは知らなかった。そんな彼らの姿が目の当た
りにされる。
中でもDAMが歌う“مين إرهابي:Who's the Terrorist”は、
彼らの立場を見事に表している。そんな楽曲がDAMの他に
も数々披露されると共に、映画ではDAMのメムバーが親た
ちが囚われの身となっている子供たちの許を訪れて夢を語る
ことの喜びを教えたり、女性たちに楽曲を提供するなどの社
会貢献の姿も描いて行く。
映画では、普段知ることの出来ない世界を観ることに価値を
感じることが多いが、パレスチナの問題はその中でも奥の深
さを感じさせられるものだ。本作ではそんなパレスチナ問題
の中でもさらに新たな側面を観ることができた感じがした。
公開は、東京では11月下旬に渋谷のイメージフォーラム他、
全国順次で行われる。

『セッションズ』“The Sessions”
20世紀フォックスのアートブランドFOXサーチライトが
2014年に創立20周年を迎える記念の第1弾として公開される
2011年度作品。
物語は1999年に亡くなったアメリカの詩人でジャーナリスト
のマーク・オブライエンの生涯に基づく。
幼い頃に罹ったポリオのために首から下が麻痺してしまった
オブライエンは、鉄の肺と呼ばれる医療器具で呼吸の補助を
受けながらカリフォルニア大学バークレー校に学び、詩人・
ジャーナリストとして生計を立てる。もちろんそれは介助員
の助けを借りながらのものだが、それなりの生活にはなって
いた。

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10月06日(日)
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