ID:47635
On the Production
by 井口健二
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■眠れる美女、終わりゆく一日、ザ・ストーン・ローゼズ:メイド・オブ・ストーン
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
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『眠れる美女』“Bella addormentata”
2011年3月紹介『愛の勝利を』などのマルコ・ベロッキオ監
督による2012年の作品。
2009年にイタリアの国論を2分した1人の女性の延命措置を
巡る出来事を背景に描かれる3つの人間ドラマ。
まず背景となるのは、17年前に交通事故に遭って以来、カソ
リック系の病院で昏睡状態が続いている事故当時21歳だった
女性の問題。彼女の両親はその延命処置の停止を求めて裁判
を起こし、裁判所は停止を認める判決を下すが、尊厳死を認
めないカソリック教会はそれに猛反発する。
そのため両親は、娘の身体を尊厳死の実行できる病院に移送
する。しかしその周囲には尊厳死に反対・賛成のデモが渦巻
いていた。一方、カソリック教会を支持母体とする当時のベ
ルルスコーニ首相を中心とした議会はその判決を無効にする
緊急立法を進めていた。
そして1番目の物語は、その立法審議に加わっている国会議
員。彼の所属する党は立法に賛成派だったが、彼自身には妻
の延命処置を停止させた過去があった。そして以来彼に反発
する娘は、女性の移送された病院の周囲で延命措置の継続を
求めるデモに参加していた。
2番目の物語は、病院勤務の医師。彼は出勤中に出会った女
性に金を取られそうになり、さらにその女性が病院でも盗み
を働く現場を目撃する。そして取り押さえた女性はとっさに
手首を切り、昏睡状態に堕ちいてしまう。しかし医師は彼女
を見捨てられなくなっていた。
3番目の物語は、輝かしいキャリアを捨てて昏睡状態の娘の
看護に没頭している女優。その女優の行動には周囲も困惑し
ており、特に女優としての母親を尊敬して止まない息子は、
母親の愛に飢えていた。また夫との関係も冷え切っていた。
そして息子はある行動に出る。
この3つの創作された物語が、実際の報道の記録映像などと
交錯しながら描かれる。
出演は、2011年8月紹介『ゴモラ』などのトニ・セルヴィッ
ロ、2011年8月紹介『やがて来たる者へ』などのアルバ・ロ
ヴァケルとマヤ・サンサ、『愛の勝利を』などのピエール・
ジョルジョ・ベロッキオ、そしてフランスから今年1月紹介
『愛、アムール』などのイザベル・ユペール。
実際の出来事は、言葉は悪いがある種滑稽ですらあったもの
で、その政治に振り回される出来事の裏での人間ドラマが巧
みに描かれている。それを支える俳優たちの演技も見ものの
作品だ。

『終わりゆく一日』“Day Is Done”
1997年に“Ghetto”という作品でハイデルベルグ国際映画祭
際の最優秀ドキュメンタリー賞などを受賞しているトーマス
・イムバッハ監督が、15年の時間を掛けて撮影した作品。
映像は、スイスのチューリッヒ駅近くの工場街の一角にアト
リエを構える監督が、その窓から見える風景を長年撮影した
もの。そこには三角に敷設された鉄道線路が見え、駒落しで
撮影された二階建て列車やイヴェント運行らしい蒸気機関車
などが走りまくる。
また周辺に暮らす人々の営みや、眼下で起きた交通事故、火
事などの様子も記録される。さらに映画の後半では高層ビル
が建ち始め、その工事の進捗なども記録されている。そして
上空を形を変えながら流れて行く雲や満月などの風景も撮影
されている。
その一方で音声には、留守番電話に残されていたという録音
が登場し、それは監督に行動記録にも相当するものにもなっ
ている。そこでは映画祭での受賞の報告や出演のオファー、
また息子の誕生や夫婦間の確執、離婚。さらに別れて暮らす
息子との会話などが記録されている。
まあ長い年月を描く作品として、その間の状況を留守番電話

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09月03日(火)
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