ID:47635
On the Production
by 井口健二
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■桃まつり−なみだ−、スカイラブ、グッバイ・ファーストラブ、ベルヴィル・トーキョー、モンスター、闇の帝王DON、命ある限り、YES/NO
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。 ※
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『桃まつり−なみだ−』
毎年観せて貰っている女性映画作家たちの短編映画祭。今年
は“なみだ”と名付けられた3番組8作品が公開される。
“壱のなみだ”
『愛のイバラ』
8ミリフィルムで撮影された作品。2005年のイメージフォー
ラムフェスティバルでグランプリを受賞している小口容子監
督のフィルムへのこだわりは相当で、本作では自家現像で生
じた傷や汚れ、光のムラなども作品に取り入れている。
作品は「不思議ちゃん」好きの男子が、声を掛けた「電波系
不思議ちゃん」の妄想に振り回されるというもの。映像はル
イ・マル作品を思い出させ、フィルム→ノスタルジー→ヌー
ヴェルヴァーグという感じは、当然の帰着かな。
『雨の日はしおりちゃんの家』
昨年2月紹介『へんげ』に主演した女優の森田亜紀が初監督
した作品。昨年3月紹介『先生を流産させる会』の宮田亜紀
を主演に迎え、人生の岐路に差し掛かっている女性たちの姿
を描いている。
宮田が演じるのは若い劇団員に芝居をつけている演出家。彼
女は仕事に行き詰まりを感じて立ち寄った公園で、森田演じ
る幼馴染の女性と出会う。女性は主婦となって平凡な暮らし
を送っていたが…。
随所に意外な展開が見られて面白くドラマが構築された作品
だった。ただその展開が、短編映画という制約とのせめぎ合
いで、もう少し長くしたらドラマの深まるはずの部分が少し
物足りない感じもした。
『MAGMA』
東京藝術大学で現代美術を学んだ後に映画美学校に入学した
という渡辺あい監督の作品。出演は2010年10月紹介『ライト
ノベルの楽しい書き方』などの五十嵐令子、他に舩木壱輝、
中原翔子、長宗我部陽子。
将来を嘱望される女子マラソンランナーと、彼女を1番にし
たいコーチ。しかし富士山麓で行われる強化合宿はいろいろ
な障害に見舞われる。突然幻のランナーが現れたり、コーチ
の秘められた過去などドラマも充分に描かれる。
しかし本作は何と言っても結末に目が行ってしまう作品だ。
ただその予兆のシーンが必要だったか否か。無きゃないで唐
突だと言われてしまうかもしれないが、僕は無くても良いの
ではないかと思った。
“弐のなみだ”
『いたいのいたいのとんでゆけ』
日本大学芸術学部映画科出身・朴美和監督の作品。不仲の見
える両親に、何とか元通りになって貰いたいと行動を始める
幼い少女の物語。出演は、劇団ひまわり所属の大川春菜。他
に林田麻里、ミョンジュ。
自分が2人の子供を育て終えた身で思い返すと、子供にこう
いう思いをさせてはいけないと切実に考えてしまう。でも現
実には、こういう思いを抱える子供が多いことも事実なのだ
ろう。
そんな子供の姿が、補助輪付きの自転車という象徴的な小道
具を使い、またメルヘンな部分を緩衝材して描かれている。
しかし現実の厳しさも容赦なく描かれる。その鮮烈さも見事
な作品だった。
『サヨナラ人魚』
映画日学校出身で2012年ぴあフィルムフェスティバル入選、
渋谷ヒカリエのプロモーションにも参加しているという加藤
綾佳監督の作品。出演は2012年『こっぴどい猫』などの小宮
一葉と舞台俳優の戸田悠太。
予備校に通う受験生でありながらその予備校の講師とも関係
を持っている女性を主人公に、人と繋がりたいけど思うよう
にはそれができない現代人の姿を描いている。タイトルにも
なっている『人魚姫』をモティーフにした作品だが…
内容的に理解はするが、物語はもっと明確に描いて欲しい感
じもした。まあそんな曖昧模糊としたのが現代の人間関係な
のかもしれないが、予備校講師との関係の描き方にもっと厳
しさが欲しい感じがした。
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03月10日(日)
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