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On the Production
by 井口健二
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■ハーブ&D、ハッシュパピー、ある浜辺の詩人、シュガー・ラッシュ、L.A.ギャングS、裸足のフラメンコ、パラノーマン、ラストスタンド
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
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『ハーブ&ドロシーふたりからの贈りもの』
               “Herb & Dorothy 50X50”
2008年に製作され、日本では2010年に公開されたドキュメン
タリー『ハーブ&ドロシー』の続編。
と言っても僕は前作は観ていないのだが、内容は全く新たな
展開を描いており、僕自身は鑑賞に支障は感じなかった。
因に前作では、元郵便局員と元図書館司書というハーブとド
ロシーの夫妻が、慎ましい生活を送りながら40年の歳月をか
けて集めた4000点もの現代アートの貴重なコレクションを、
国立美術館に寄贈するまでを描いていたようだ。
ところがそのコレクションは、あまりの膨大な点数のために
国立美術館でも所蔵に苦慮することになる。そこで今度は、
そのコレクションを50点ずつ50州の美術館に分けて行くこと
にするのだが…。本作ではその顛末が描かれる。
老夫妻の内でも妻のドロシーはネットや電子メールも使いこ
なす。そんなドロシーの夢は全てのコレクションをネット上
に一堂に会させること。しかし寄贈された美術館側の対応は
まちまちで、さらに閉館の決まる美術館も出てくる。
その一方で、展示に工夫を施す美術館やガイドを充実させる
美術館。しかし作品が現代美術である故に、鑑賞する側にも
戸惑いが見られたり、またアーチストによっては展示方法に
疑問を呈する者も現れる。
そんな美術に対する様々な状況が見事に集約して描かれる。
それは2人のコレクションに特有のものではないが、2人の
ことは先の作品で描かれているのだし、本作はそこを1歩進
めて、現代芸術の現状の描かれた作品とも言えそうだ。
監督は、大学卒業後の1987年に渡米し、ニューヨーク在住で
NHK総支局勤務などを経て独立。初監督作品として発表し
た前作で、アメリカのドキュメンタリーでは異例とも言える
17週間のロングランを達成した佐々木芽生。
老夫妻の日常なども丁寧に追う一方で、アーチストや美術館
関係者などへのインタヴューもしっかりと行っており、何よ
り前作の後もフォロー取材を行い続けていたことが、本作を
生み出している。
しかも監督本人が夫妻の行動に共感し、愛情を持って描いて
いることが、本作の素敵な感動を生み出している要因とも言
える作品だ。それにいろいろな現代美術が鑑賞できるのも素
晴らしい作品だった。

『ハッシュパピー』“Beasts of the Southern Wild”
今年の米アカデミー賞で、作品賞、監督賞、主演女優賞、脚
色賞の主要4部門で候補に挙げられている作品。
ハッシュパピーという名の主人公は、工場街の見える陸地の
そばにあるバスタブ島と呼ばれるコミュニティで父親と共に
暮らしていた。しかしいつも飲んだくれてばかりの父親と一
緒では、彼女の境遇は孤児も同然だ。
それでも彼女は、「宇宙の全ては調和している」という考え
の許、多くの動物や仲間と共に、この世間からは切り離され
たコミュニティで勝手気ままに暮らしていた。その一方でバ
スタブ島に危機が迫っていることも教えられてはいた。
そんなある日、バスタブ島を大嵐が襲いコミュニティは水浸
しになる。その水の引かない原因が工場街を守る堤防にある
と考えた父親たちはある作戦を決行する。しかしバスタブ島
は元通りにはならなかった。
この他に、ハッシュパピーが母親を探しに行く冒険や、政府
がバスタブ島に強制退去命令を下したり、また温暖化によっ
て太古の恐怖の巨獣オーロックスが甦る出来事などが続き、
ハッシュパピーにはある決断が迫られる。
バスタブ島は架空のものだが、物語の背景には南ルイジアナ
で地盤沈下の続いている地域の状況やその文化などが反映さ

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02月10日(日)
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