ID:47635
On the Production
by 井口健二
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■汚れなき祈り、アンナ・カレーニナ、体温、愛アムール、暗闇から手をのばせ、カルテット!、ジャンゴ繋がれざる者、魔女と呼ばれた少女
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
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『汚れなき祈り』“Dupa dealuri”
2007年12月紹介『4ヶ月、3週と2日』のクリスティアン・
ムンジウ監督が、2005年6月にルーマニアの片田舎で起きた
事件を再現した作品。
物語は、列車の駅に友を迎えに来た修道女の姿から始まる。
彼女が出迎えたのはドイツに行っていた幼馴染の女性。2人
は共に孤児院で育ち、1人は地元の修道院に入信し、1人は
ドイツに職を求めたようだ。しかしドイツに行った女性は夢
やぶれたということなのだろう。そして2人は、小さな町の
郊外の丘に建つ修道院へとやって来る。
その修道院は1人の司祭によって運営されていたが、彼は教
会に属する司祭に与えられる俸給も返上するほどのストイッ
クな人物だった。そして教会には奇跡を起こす宗教画がある
というが、その佇まいも簡素で、そんな中で修道女たちは、
司祭が命じるままの質素な生活を続けていた。
そんな中に新たにやってきた女性は、なかなかな環境に馴染
むことができず、幼馴染の修道女に一緒にドイツに行こうと
訴えるのだが…。司祭は行っても良いと言うものの、それは
修行を無駄にすることだと諭され、修道女も教えの道を捨て
ることができない。
そしてドイツから帰ってきた女性に謎の発作が起き始める。
その発作は現代医学によっても原因が判らず、やがて司祭た
ちには発作を鎮めるために悪魔祓いの儀式を行うしか術がな
くなってくる。
背景の宗教は正教会ということだが、ローマ・カソリックと
はかなり違って、伝統的な儀式などの伝統に重きを置く宗派
のようだ。その実態は僕にはよく判らないが、見た感じはか
なりのカルトのようにも見えてしまう。もちろん歴史は違う
が、宗教というのは大体そんなものだ。
因に、実際の事件はトランシルヴァニアで起きたようだが、
映画ではブカレスト近郊の村に設定され、マニア的な期待に
はあまり明確なものは感じられなかった。でもまあこれは現
実に起きた事件である訳だし、そんな宗派が21世紀の今日に
なっても生き残っているということだ。
出演は、ともに本作で映画デビューのコスミナ・ストラタン
とクリスティナ・フルトゥル。因にストラタンはTVレポー
ターも務めるジャーナリスト。フルトゥルはナショナルシア
ターに所属する舞台女優だそうだ。
なお本作と同じ題材では先に舞台劇も発表されているようだ
が、本作の脚本はBBC所属のジャーナリストだったタティ
アナ・ニクレスク・ブランの調査に基づき、ムンジウ監督と
ブランが新たに書き下ろしたものだ。

『アンナ・カレーニナ』“Anna Karenina”
『戦争と平和』と並ぶ、レフ・トルストイ原作ロシア文学の
映画化。
舞台は1870年代のロシア。サンクトペテルブルグで政府高官
の貞淑な妻だったアンナは、兄夫婦の諍いを仲裁するために
モスクワへやって来る。しかしその旅の途中で出会った若き
貴族の将校ヴロンスキーが、彼女の運命を変えてしまう。
物語の始まりでは、アンナが遭遇する鉄道事故の様子も描か
れ、彼女の悲劇的な終末が暗示される。その一方で対称的な
運命を歩むキティとリョーヴィンの姿もきっちりと描かれて
いる作品だ。
同じ原作からは無声映画時代から数多くの映画化があるよう
だが、僕が憶えているのは1967年のモスフィルム版だ。その
前に『戦争と平和』の映画化も成功させているソ連の映画ス
タジオが、初の70mmで制作したのがその作品だった。
しかしまだ10代後半だった僕にとって、このタチアナ・サモ
イロア主演の作品は、正直に言って大スペクタクルの『戦争
と平和』ほどには感銘を受けなかったし、まあそんなものか
なあという程度の印象だった記憶しかない。

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01月30日(水)
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