ID:47635
On the Production
by 井口健二
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■ベラミ、さよならドビュッシー、サイレント・ハウス、カルメン故郷に帰る、アルバート氏の人生、君と歩く世界、チチを撮りに、PARKER
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
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『ベラミ愛を弄ぶ男』“Bel Ami”
『トワイライト』サーガのロバート・パティンスンが主演す
るギ・ド・モーパッサン原作の映画化。
原作は1885年の発表で、物語の舞台は1890年のパリ。書かれ
た時は近未来小説だったのかな? 退廃的なブルジョワジー
が支配する社交界を1人の男が生き抜いて行く。
主人公は、フランスによるアルジェリア派兵からの帰還兵だ
ったが、今は鉄道会社で安月給の身。夜のカフェに出向いて
もビール1杯を飲むのがやっとだ。そんな彼の周囲では男女
が狂乱を繰り広げていた。
そんなカフェで彼は戦友を見つけ、羽振りの良さそうな戦友
は、彼に金を与えて夜会に招く。その夜会で淑女たちに紹介
された主人公は、人生の転換点を見つけることになる。その
淑女たちの手引きで新たな道に乗り出した主人公は…。
古典文学の映画化なので、もっとシンプルな遍歴ものかと思
いきや、フランスのモロッコ派兵やマスコミによる政変の誘
導など、政治的な陰謀も絡んで、現代にも通じるところの多
い作品だった。
モーパッサンの作品は、中学で「首飾り」が教科書に載って
いたのを記憶している程度だが、検索したら同じ1885年発表
の作品だった。本作も同様のパリの社交界が背景だったもの
で、そんな記憶にも繋がる作品だ。
共演は、ユマ・サーマン、クリスティン・スコット=トーマ
ス、クリスティーナ・リッチ。いずれもジャンル映画にも登
場する現代映画のミューズたちが主人公を取り巻き、妖艶な
魅力を振りまいている。
他に、2003年11月5日付「東京国際映画祭」で紹介した『カ
レンダー・ガールズ』などのフィリップ・グレニスター、今
年7月紹介『声をかくす人』などのコルム・ミーニー、今年
キーラ・ナイトレイ主演で映画化された“Anna Karenina”
に出演の新星ホリデイ・グレンジャーらが脇を固めている。
監督は、1989年にロイヤル・ナショナル・シアターの共同監
督に就任し、これまでに3度のローレンス・オリヴィエ賞に
輝くデクラン・ドネランと、彼の長年のパートナーのニック
・オーメロッド。本作は彼らの映画進出第1作となる。

『さよならドビュッシー』
2009年の「このミステリーがすごい!」大賞を受賞した中山
七里原作の映画化。
物語の主な舞台は資産家の邸宅。その邸宅で主人公の遥は、
幼くして両親を亡くした従姉妹のルシアと共に双子のように
育てられてきた。
そんな遥とルシアは同じ音楽学校でピアノを学んでいたが、
ルシアは亡き両親の業績を継ぐことを決心していた。そんな
ルシアに対していつかプロの演奏家になって、コンサートで
あなたのためにピアノを弾くと約束する遥だったが…。
その2人を悲劇が襲う。2人が離れの祖父の部屋を訪ねてい
た時に起きた火災で祖父とルシアは焼死、遥も全身に火傷を
負ったのだ。そして手にも障害を負った遥はピアノを弾くの
もままならなくなるが、遥にはルシアとの約束があった。
こうしてピアノを弾くためのリハビリが必要になった遥の前
に、司法試験にトップで合格しながらも、ピアノ講師の道を
選んだ岬洋介が現れる。その岬は独自のリハビリプログラム
を開始するが…。やがて遥が事件に巻き込まれる。
原作は「このミス」受賞ということだが、映画の展開は順当
なもので、謎解きも目新しくはない。というか、ミステリー
映画のファンならすぐに気が付いてしまうものだ。そこで僕
はクライマックスをどう盛り上げるかに注目した。
そのクライマックスは、正に映画的で見事な仕上がり。その
少し前からの演出も強力で、そこからエンディングに雪崩込
んで行く展開は、映画として目を見張るものになっている。

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12月23日(日)
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