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On the Production
by 井口健二
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■第25回東京国際映画祭+臨時ニュース
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※今回は、10月20日から28日まで行われていた第25回東京※
※国際映画祭で鑑賞した作品の中から紹介します。なお、※
※紙面の都合で紹介はコンパクトにし、物語の紹介は最少※
※限に留めているつもりですが、多少は書いている場合も※
※ありますので、読まれる方はご注意下さい。 ※
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《コンペティション部門》
『テセウスの船』“Ship of Theseus”
題名はギリシャ神話に登場する船に由来し、部品を全て交換
した船が元の船と同じと言えるのかというパラドックスのこ
と。そして映画では臓器移植を巡る3つの話が描かれる。そ
の1話目は映像も美しく素晴らしかったが、2話目は皮肉が
強くて食傷気味、3話目はテーマも離れて、映画の全体では
結局何が言いたいのか判らなくなった。1、2話目は良いの
でこれに沿った3話目を作るか、3話目の主張をしたいのな
ら、これだけで独立した作品にすべきたっだと思う。
『風水』“万箭穿心”
夫の働きで大きなアパートに引っ越してきた夫婦。しかしそ
の引越から波風が立ち始め、2人の心は離れて行く。それは
引越した先の風水の影響とも言われるが…。ドラマとしては
面白かった。風水を信じることへのアンチテーゼとも取れる
が、そこへの持って行き方が巧みで嫌味も少ない。女性の強
さも見事に描かれていて、それは男性の僕が見ていても敬服
する感じだった。それに対する男性は…、これも現代を描い
ている作品だろう。
『アクセッション−増殖−』“Accession”
南アフリカの貧民街を舞台に、自らの罹病を疑った若者が、
風説を信じてある恐ろしい行動に出る。若者の無知が引き起
こす愚かな出来事。コンペ作品では時折極めて不快な作品に
出会すが、今年はこの作品がそれに当る。言論の自由は守ら
れるべきものだが、「世の中には言っていいことと、言って
も仕方がないことがある」とは僕の先輩の言葉で、本作の内
容もわざわざ言う必要もないし、それが観客に何かをもたら
すものでもない。ただ不快なだけだった。
『シージャック』“Kapringen”
貨物船がインド洋で海賊に襲われる。その本社との身代金交
渉の顛末を描いた作品。背景には日本の津波の話などもあっ
て、それなりの興味は惹かれたが、話の全体がダラダラとし
てドラマに新鮮味もない。特に食料が足りなくなる不安は、
最初に問題として語られるが、それ以後の解決策が魚釣りだ
けではおかしいだろう。金の引渡し方法も最初の話と違って
いた。主人公がコックというのには『沈黙の戦艦』を思い出
したが、そういう話でもなかった。
『黒い四角』“四角”
日本人監督が中国で撮影した作品。売れない画家の前に黒く
四角い物体が出現し、やがて画家は謎の男と巡り会う。物体
はモノリスを想起させるが、男の存在には『地球に落ちて来
た男』が思い出された。そうなるとその男の出自が気になる
ところだが、それがこの話では…。しかもその話と全体の物
語との関連も意味不明。それはただの思いつきだけで描くよ
うな話ではない。因に今回の審査員の1人は、ニコラス・ロ
ーグ監督の息子だそうだ。
『未熟な犯罪者』“범죄소년”
主人公は16歳の少年。すでに保護観察中で、音声認識による
居場所の確認が義務付けられているようだ。そんな少年が集
団窃盗に関わり、今回は少年院送りとなる。そこで少年は、
死んだものと思っていた母親の生存を教えられるが…。未熟
な母親と未熟な少年、そんな2人が再会して新たな生活が始
まる。この作品もドラマが巧みで、今の日本でもありそうな
物語が展開されて行く。さすが実力のある韓国映画という感
じがした。
『もうひとりの息子』“Le fils de l'Autre”
パレスチナ問題が背景の物語。同じ日に生まれたイスラエル
軍人の息子とパレスチナ人の息子が、病院で取り違えられて
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10月28日(日)
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