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On the Production
by 井口健二
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■裏切りの戦場、北のカナリア、合衆国最後の日、僕の中のオトコの娘、カリフォルニア・ドールズ、拝啓愛してます、LOOPER、ゲットバック
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
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『裏切りの戦場・葬られた誓い』“L'ordre et la morale”
日本では「天国にいちばん近い島」として知られる南太平洋
の観光地ニューカレドニア。その現在もフランス植民地の諸
島で1988年に起きた実際の事件を描いた作品。
その事件を、2001年『アメリ』などの俳優で、2004年1月紹
介『ゴシカ』などの監督も務めたフランス人マチュー・カソ
ヴィッツが、自らの製作、脚本、監督、編集、主演で映画化
した。
物語は、フランス国家憲兵隊で指揮官を務める大尉が突然の
出動命令を受けるところから始まる。その派遣先はニューカ
レドニアのウヴェア島。そこで独立過激派が憲兵隊宿舎を襲
い、4人を殺害、30人の人質を取ったというのだ。
この事件解決のため部下50人と共に現地に向かった大尉だっ
たが、現地にはすでに陸軍の将軍が精鋭300人を引き連れて
到着しており、彼らは強行突入による人質解放を主張してい
た。
そんな中で独立過激派との対話による解決を目指す憲兵隊の
大尉だったが…。時は1988年4月、大統領選を目前にして、
左派ミッテランと右派シラク首相の両陣営は、共に事件を早
急に解決する必要があった。
脚本は派遣された大尉の手記に基づくもので、それまでの救
出作戦をすべて対話により解決してきた交渉のベテランが、
唯一失敗したとする事件の顛末が描かれる。因に大尉はこの
翌年に憲兵隊の職を辞しているものだ。
共演は、物語の舞台にもなるニューカレドニア・リフー島の
出身で、出演前はフランスで法律を学んでいたという映画初
出演のイアベ・ラパカ。
他に、今年6月10日付「フランス映画祭」で紹介『ミステリ
ーズ・オブ・リスボン』(公開名:ミステリーズ/運命のリ
スボン)に出演のマリク・ジディ、2010年3月紹介『冷たい
雨に撃て、約束の銃弾を』などのシルヴィー・テスチューら
が脇を固めている。
権力欲に取り憑かれた政治家が自らの保身のために、現地の
状況を無視して命令を下し、事件を最悪の事態に引きずり込
む。それは日本の政界を見てもよくある話だが、そこに軍隊
が絡むと、事態はあっという間に悲劇を生み出す。そんな政
治家の愚かさと軍隊の暴虐さが鮮明に描かれた作品だ。
因にカソヴィッツは、現地ニューカレドニアなどでの調査取
材を重ね。現在のフランスでも独立過激派による一方的な犯
罪とされている事件に光を当て、その真実を世に問う目的で
作品を作り上げたようだ。

『北のカナリアたち』
2010年に公開された『告白』の原作者・湊かなえが2010年に
発表した短編集『往復書簡』に所載の「二十年後の宿題」を
原作とする作品。
物語は、図書館で働く初老の女性の姿から始まる。定年退職
の日を迎えた彼女は「のんびり過ごしたい」と言って職場を
離れるが、独り住まいの彼女の住居に刑事が訪ねてくる。そ
れは彼女の元教え子が、殺人を犯したという捜査だった。
ここで物語は20年前に遡る。北海道礼文島の分教場に女の先
生が赴任する。そこには6人の小学生がいて、先生の指導で
コーラスに目覚めた生徒たちは、札幌の大会に出ることを夢
見る。しかしある出来事がその夢を打ち砕てしまう。
そして島を追われるように出て行った先生と、残された生徒
たち。心を通わせなくなった彼らは、重い闇を背負ったまま
20年を過ごしてきた。そんな生徒と先生が再び過去と向き合
わなくてはならなくなる。
果して20年前の出来事の真相とは、そして殺人容疑者となっ
た生徒の行方は? 心の闇が徐々に紐解かれて行く。それは
子供の頃には判らなかった心の襞だった。
出演は、先生役に吉永小百合。そして20年後の生徒たちを、

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10月14日(日)
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