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On the Production
by 井口健二
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■B・レガシー、フタバから遠く…、ビラルの世界、情熱のピアニズム、リヴィッド、恋と映画とウッディ・アレン、UVERworld、中国映画の全貌
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
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『ボーン・レガシー』“The Bourne Legacy”
2002年11月紹介『ボーン・アイデンティティー』に始まった
ロバート・ラドラム原作「ジェイスン・ボーン」シリーズが
3部作で完結し、そのシリーズからインスパイアされた新た
な主人公による作品。元々ラドラムの原作は3冊しかなかっ
たもので、本作はハリウッドによる続編だ。
因に先の3部作では、最終的にボーンは身体能力を高める医
療実験の被験者とされていたものだが、本作ではそれと並行
して進められていた別の実験の被験者が主人公となる。その
男アーロン・クロスは、北部カナダの極寒の地で日々を過酷
な鍛錬に明け暮れていた。
ところが支給されていた薬剤が乏しくなり、彼は生身の人間
には不可能とされる山越えをして前線基地に向かうのだが、
そこで新たな事態に巻き込まれる。そしてCIAの陰謀に気
付いたアーロンは、ミッションに従事していた女性研究者と
共に薬剤の保管場所を目指す。
物語の推移は至って単純だが、それを華麗かつ過激なアクシ
ョンで彩って行くのが本作の見所だ。とは言うものの、正に
つるべ打ちの格闘技からバイクアクションまでの展開は、観
客にもかなりの体力が要求されるもので、観終わると多少の
疲労感もあるほどの刺激的なものだった。
主演は今年6月紹介『アベンジャーズ』などのジェレミー・
レナー。共演は2006年3月紹介『ナイロビの蜂』などのレイ
チェル・ワイズ、2008年7月紹介の『インクレディブル・ハ
ルク』には主演したが『アベンジャーズ』には登場しなかっ
たエドワード・ノートン。
他に「ボーン」シリーズに登場のジョアン・アレン、1997年
『L.A.コンフィデンシャル』などのデヴィッド・ストラザ
ーン、2008年『ブッシュ』などのスコット・グレン、2000年
『エリン・ブロコビッチ』などのアルバート・フィニーらが
脇を固めている。
脚本と監督は、オリジナル3部作の全脚本を手掛けたトニー
・ギルロイ。シリーズの全貌を知り尽くした脚本家が、オリ
ジナルを上回るアクション作品を作り上げた。それは北極圏
から東南アジアまで、背景となる風景も楽しめる作品だ。

『フタバから遠く離れて』
2011年3月11日の福島第1原発災害により町ごと避難を命じ
られた福島県双葉郡双葉町の姿を追ったドキュメンタリー。
3/11関連のドキュメンタリーを観るのは何本目になるのだ
ろう。それぞれが色々な意図を持って描かれた作品には、作
品ごとに見所があるが、もしかしたら本作は、僕が最も観た
かった作品と言えるものかもしれない。
この作品には、恐らくは歴史から消え去ってしまうのであろ
う原発の町の悲劇が、見事に描かれている。
そこには、緊急避難命令によってまだ生存していたかもしれ
ない家族を救いに行けなかった人の悔悟や、畜舎に繋がれた
まま放置された家畜たちの最後など、原発と共に僕らの目か
ら隠されていた事実が浮かび上がってくる。
その一方で作品は、原発推進派の集まりである全原協の副会
長だった双葉町町長の姿を追い、避難先の埼玉県の廃校に置
かれた仮の町長室での姿や、全原協の会議での発言の様子な
ども描かれる。
ここでは福島原発が放射能を撒き散らしている最中なのに、
それには触れずに出来もしない安全対策を国に要求する敦賀
の首長の姿など…。そして双葉町町長は、自分のした事は間
違っていたのかと心情を吐露してしまう。
勿論そこには自業自得という見方もあるだろうが、現実には
国を挙げて彼らを騙し続けてきたのであり、その詐欺の被害
者を「今まで甘い汁を吸ってきた」などと非難することは、
詐欺師を擁護することにほかならない。

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08月12日(日)
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