ID:47635
On the Production
by 井口健二
[460044hit]
■莫逆家族、アシュラ、籠釣瓶、恋に至る病、リンカーン/秘密の書、キック・オーバー、デンジャラス・ラン、トータル・リコール+Hobbit
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。 ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『莫逆家族』
1999年から2004年まで「週刊ヤングマガジン」に連載された
田中宏原作漫画を、2010年9月紹介『海炭市叙景』などの熊
切和嘉監督が、主演にお笑いコンビ・チュートリアルの徳井
義実を迎えて映画化した作品。
主人公は30代半ばの男性。以前は暴走族のリーダーで鳴らし
ていたようだが、今は建設労務者でグダグダした仕事を続け
ている。その存在は妻や高校生の息子からも疎まれている感
じだ。しかしその息子の恋人で、主人公の族仲間だった男の
娘がレイプ被害にあったことから事態が動き出す。
それは主人公を過去に直面させ、その過去を精算するものに
なって行った。内容的には『海炭市叙景』にも通じるものが
あると思われるが、本作ではそれがさらに暴力的に描かれて
いた。
その違いは原作によるものではあろうが、それを敢えて熊切
監督が撮る理由があったのか否か。2008年10月紹介『ノン子
36歳』以降の作品からは違和感も感じる。しかしそれ以前
の作品を考えるとこれも熊切作品という感じだし、その根底
にあるものは多分同じなのだろう。
共演は、林遣都、阿部サダヲ、玉山鉄二、新井浩文、大森南
朋、北村一輝、村上淳、そして倍賞美津子。さらに今年3月
紹介『けの汁』などの石田法嗣、2011年1月紹介『津軽百年
食堂』などのちすん、2010年4月紹介『書道ガールズ』など
の山下リオらが脇を固めている。
物語の全体には、水よりも濃い血の流れのようなものも感じ
させるが、その中から新しい未来を生み出そうとする、そん
な希望のようなものも感じさせてくれる作品ではあった。こ
れも熊切作品ということだろう。
なお徳井は、普段のヴァラエティ番組などで見掛けるのとは
雰囲気も風貌も異なり、この役柄に真剣に取り組んでいる気
持ちが伝わってきた。因に映画の終盤で倍賞に頬を張られる
シーンは、至福の喜びだったようだ。
さらにクライマックスの決闘シーンは、2011年3月の極寒の
中、3日間徹夜で撮影されたものだそうで、その徳井の意気
込みに応えて、上記の現代日本映画を背負う俳優たちが見事
な競演を見せているものだ。
『アシュラ』
ジョージ秋山原作、発表当時有害図書と糾弾された作品が、
原作のヴィジュアルを活かしたアニメーションで映画化され
た。
時代は中世、平安京の頃。相次ぐ洪水や旱魃による飢饉に加
え、日本史上最大の内戦・応仁の乱により世の中は荒廃。食
物を失った人々の間では人肉食も横行し始めていた。そんな
中で1人の赤子が誕生する。
産み落としたのは狂女。彼女は最初のうちこそ赤子を育てよ
うとするが…。やがて親ともはぐれた赤子は、野獣たちの中
を生き抜いて行く。そしてアシュラと名付けられた少年は、
人々を襲うケダモノとなる。
原作は、1970年8月の連載開始で当時の僕はあまり漫画は読
んでいなかったが、この作品だけは上記の話題もあり、回し
読みなどで目にしていた。その当時の印象は、ひどく物悲し
い物語だったと記憶している。
それは、今回映像化された中でも、若狭に肉を与えようとし
て拒否されるくだりなどは、何故なんだと自問したくなるく
らいのものだった。その時は心底からアシュラを救いたくな
るような気持ちだった。
そんな作品に、40年以上を経て今回は再会したものだが、当
時を知る者としては、さすがにその時のインパクトは薄れて
いた。しかし当時のメッセージは今でも通じるものと思われ
るし、今の若い人たちにはそれを感じ取って欲しいものだ。
監督は、2005年『鴉-KARASU-』が話題になったさいとうけい
いち。2011年『TIGER & BUNNY』をヒットさせた俊英が、歴
[5]続きを読む
08月05日(日)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る