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On the Production
by 井口健二
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■聴こえてるふり、夏の祈り、ハンガーゲーム、東野圭吾“笑”、コッホ先生、強奪のトライアングル、プロメテウス、空飛ぶペンギン
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。 ※
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『聴こえてる、ふりをしただけ』
大阪で看護師をしながら2児を育てる母親であり、主婦でも
ある今泉かおり監督による長編デビュー作。本作は、今年の
ベルリン国際映画祭・ジェネレーションKプラス部門で、準
グランプリに相当する子ども審査員特別賞を受賞した。
主人公は母親を突然の事故で亡くした11歳の少女。その葬儀
も一段落し、久しぶりに登校する。その彼女には「お母さん
が見守ってくれている」という言葉と共に、母親の遺品であ
る指輪が首に懸けられていた。
そんな彼女を教室の仲間たちは優しく迎えてくれるのだが。
そこにはまだ幼さゆえの気遣いの足りなさも感じられる。そ
してそんな彼女のクラスに、養護教室から少し遅れた女子が
転入してくる。
その女子は「お化けがいるから1人でトイレに行けない」と
言い出し、霊魂の存在を信じない年頃の学友たちは囃し立て
るのだが、母親が見守っているという言葉を信じたい主人公
は女子の言葉を一概に否定することはできない。
こうしてその女子がトイレに行くときの付き添いを主人公が
務めるようになって行くが…やがてその行為が仲間との間に
確執を生んで行く。そしてその女子との関係にも微妙な影が
落ちて行く。
「子ども審査員賞」というのは実際に11歳〜14歳の11人の子
供の審査員によって選出されるものだそうで、本作が子供た
ちの共感を得たということの証になりそうだ。しかもその内
容は日本人でなくても共感できるものだった訳だ。
因に、映画の中での霊魂に関する考察は監督自身が子供の頃
に考えたものだそうで、そのような実体験にも基づく作品の
ようだ。
出演は、野中はな、郷田芽瑠。いずれもオーディションで選
ばれた子役たちが瑞々しい演技を見せている。他に、杉木隆
幸、越中亜希、唐戸優香里という人たちが共演。
なお、監督の夫は自主映画監督の今泉力哉で、その点での家
族の理解はあったと思われるが、本作の制作は長女出産の育
児休暇中に行われたものだそうだ。子供の視点に立った細や
かな作品は、今後の活躍にも期待したくなるものだった。
『夏の祈り』
2011年9月紹介『ネムリユスリカ』の坂口香津美監督が、撮
影に2年間を掛けて制作した長崎原爆を巡るドキュメンタリ
ー。なお監督は、元々がテレビで200作品以上を発表してい
るドキュメンタリストであるが、本作は初めての映画館用の
作品となる。
作品は「原爆ホーム」と呼ばれる長崎の老人ホームを中心に
描かれる。それは名称の通り長崎原爆で被爆した人たちが暮
らしている場所だ。そしてその入居者の何人かを対象に、被
爆の状況や現在の生活ぶりなどが描かれて行く。
それは今までに見聞きしてきたものも多くはあったが、中で
被爆者たちが自ら被爆の様子を再現してみせる芝居には衝撃
を受けた。それは被爆直後に水を求めて彷徨う人たちを再現
したものだったが、看護師の人たちと一体になったその芝居
は見事だった。
また、大学病院の研究者の許に置かれた数多くの被爆者の遺
体。そこには被爆から70年近くが経った今でも遺伝子を傷つ
け続ける放射能の無気味な姿も写し出される、このようなこ
とを知っただけでも、本作には見る価値があったと言えるも
のだ。
なお本作の撮影は昨年の3月まで行われ、監督は帰京直後に
3/11に遭遇したそうだ。そしてそれに続く福島原発による
被曝。その実態はほとんどが隠蔽されたままだが、本作を見
ていると我々の70年後も思いやられるものだ。
そう言えば長崎の大学には、東京電力が「放射能の人類に与
える影響はない」とする研究のため多額の資金提供を申し出
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07月08日(日)
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