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On the Production
by 井口健二
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■道、シグナル、ザ・マペッツ、崖っぷちの男、だれもがクジラを愛してる、ヘソモリ、この空の花、ブレーキ
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
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『道−白磁の人−』
2011年8月紹介『MADE IN JAPAN−こらッ!−』などの高橋
伴明監督が、日韓文化交流の掛け橋となった林業技師・浅川
巧の姿を描いた作品。
時は1914年、日韓併合から4年が経ったある日、浅川は京城
(現ソウル)にやってくる。彼は山梨の農業学校を卒業後、
営林署で樹木の育成に従事し、各国支配の下で荒らされた朝
鮮半島の山林を復活させるためにやってきたのだ。
その地には先に小学校教諭の兄夫妻と母親も暮らしており、
兄は朝鮮磁器の収集も行っていた。そんな中で朝鮮総督府の
林業試験場に勤務する浅川だったが、無理に日本杉や西洋杉
の植林を推進する試験場の方針には疑問も感じていた。
そして朝鮮人の職員と共に山林で種子を集め、研究を続ける
浅川は徐々に朝鮮文化への造詣も深めて行く。中でも注目し
たのは独特の暖かさを感じる白磁だったが、高貴な青磁に比
べて庶民的な白磁は2束3文で売られる存在だった。
第2次大戦以前の朝鮮半島で日本政府が行う民族差別に苦し
む人々。そんな戦前の日本人による様々な悪行が、浅川の目
を通して描かれて行く。
出演は、2010年3月紹介『孤高のメス』などの吉沢悠、韓国
ドラマで活躍のペ・スビン、他に、酒井若菜、塩谷瞬、市川
亀治郎、堀部圭亮、田中要次、大杉漣、手塚理美らが脇を固
めている。
高橋監督は、2004年12月紹介『火火』でも陶磁器を扱ってい
たが、今回はその製造ではなく製品を通して日韓両国の民間
レヴェルでの交流が描かれる。しかもその舞台のほとんどは
韓国で、日韓併合から日本の敗戦までの様子が丁寧に描かれ
たものだ。
因に、日本映画で第2次大戦の終りは「終戦」として描かれ
ることが多いが、本作では明確に「敗戦」が描かれており、
それは韓国が舞台だからこそ出来るもので、その点でも高橋
監督の仕事は評価したいところだ。
なお撮影には、ハプチョンやプアンの映像テーマパークが使
用され、またVFXなどのポストプロダクションは今年1月
紹介『超能力者』も手掛けたCJ Powercastで行われるなど、
製作はほぼ韓国側で行われている。これにより本作には韓国
映画振興委員会の支援も決定しており、同委員会が外国映画
の支援を行うのは初めてのことだそうだ。

『シグナル 月曜日のルカ』
2002年の「小説すばる」新人賞を受賞した関口尚による同名
原作の映画化。
物語の舞台は田舎町の映画館。東京の大学に通っている主人
公は、夏休み学資稼ぎの目的で故郷に建つ映画館で映写技師
のアルバイトに応募する。それは時給1500円という田舎では
破格の仕事だったが、それに先立って館主から3つの約束を
させられる。
その職場にはルカという先輩の映写主任がいたが、その女性
主任は映画館に住み込み、過去3年間は館の外に出たことが
ないという。その女性の過去を訊かないのが館主との約束の
1番目だった。
こうして始まった主人公のアルバイトには、映写機へのフィ
ルムの掛け替えや配送されたフィルムの準備など様々な仕事
があり、その練習やいざとなっての失敗などいろいろな事が
起きて行く。そしてその中から徐々にルカの過去が明らかに
なって行くが…
2006年11月5日付「東京国際映画祭コンペティション」で紹
介した『魂萌え!』でも映画館の映写室のシーンが出てきた
が、本作ではさらに本格的にフィルム上映までの手順などが
紹介されている。それは上映のディジタル化が進む中で今し
か写せないシーンだ。
それはともかく、映画には現代若者の風俗みたいなものも織
り込まれて、ミステリアスな「月曜日のルカ」の物語が展開

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04月29日(日)
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