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On the Production
by 井口健二
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■苦役列車、ジョルダーニ家、グレイヴ・E、ジョイフル♪ノイズ、彼女について知ることのすべて、ブライズM、王朝の陰謀、白い指+Carrie
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。 ※
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『苦役列車』
第144回(2010年下期)芥川賞を受賞した西村賢太原作小説
の映画化。
主人公は、港で日雇いの荷役労働者として働く男性。ある日
彼は、職場に向かう集合バスの中で、専門学校に入学し上京
してきたという同い年の若者と出会う。そして何となく気の
合った2人は、一緒に酒を飲む仲になる。
そんな主人公は、古本屋でアルバイトをしながら大学に通っ
ているという苦学生の女性に目を付けていたが、若者の仲立
ちで彼女と友達になることができる。そして3人で海に行っ
たりするようになるが…
主人公の背景にはいろいろなものがあって、それが徐々に明
らかになって行く。
今回の試写はほぼ内覧だったようで、プレス資料もほとんど
用意されていなかった。そのため原作者の経歴などはネット
で検索したが、この物語の背景部分がほぼ実生活に基づいて
いるようで、そのことに衝撃を受けた。
そんな衝撃的な背景を持つ物語だが、それは特に嫌みに感じ
ることもなく、普通とは言えないかも知れないけれどさぼど
の違和感もなく、丁寧な演出で1980年代後半の青春映画とし
て見事に映像化されていた。
主演は2008年4月紹介『百万円と苦虫女』などの森山未來。
なお森山の前作『陸の魚』は内容的な部分でこのサイトには
アップしなかったが、森山の演技は優れていると感じてはい
たものだ。
共演は、2011年12月紹介『きつつきと雨』などの高良健吾と
AKB 48の卒業を発表した前田敦子。高良の爽やか振りは健在
で森山の欝々とした感じと好対照を演じている。また前田は
難しい役柄ではなかったが良い感じに演じていた。
脚本は2011年9月紹介『女の河童』などのいまおかしんじ。
監督は同年3月紹介『マイ・バック・ページ』などの山下敦
弘が担当している。
1976年生まれの監督の演出は、1944年生まれ原作者の前作の
時は、1949年生まれの僕には何処か違和感があったが、本作
の原作者は1967年生まれで脚本家も1965年生まれということ
では、時代感覚もうまく捉えられていた感じだった。
そんな時代の青春が丁寧に描かれた作品と言えそうだ。
『ジョルダーニ家の人々』“Le cose che restano”
2005年6月紹介『輝ける青春』のサンドロ・ペトラリアとス
テファノ・ルッリの脚本による現代イタリアを背景にした家
族の物語。なお脚本家には『輝ける青春』の前に“La vita
che verra”という1960年までが背景の作品があり、本作で
3部作の完結となるようだ。
物語の中心はローマに暮らす夫婦と3男1女の一家。長男は
外交関係の公務員で紛争地帯に派遣されている。長女は結婚
しているが心理関係の医療に従事し、いろいろな心に悩みを
抱える人たちのケアに当っている。
その長女が妊娠し、長男の帰国も重なって一家は集まること
になる。そこには建築家を目指す学生の次男や天真爛漫な末
弟の姿もあった。しかしその末弟が事故で帰らぬ人となる。
そして一家の崩壊が始まる。
そこでは悲嘆に暮れたまま施設に収容を余儀なくされる母親
や、そんな妻を尻目に不倫を続ける父親。また優秀なのに自
分の将来に不安を抱く次男、ある事情を抱えている長男。
さらには、長女の患者で戦場からの帰還者や、イラクからの
難民の女性などの物語が添えられ、一家を巡る現代を反映し
たドラマが展開されて行く。
『輝ける青春』は上映時間366分におよぶ大作の映画だった
が、本作はさらに399分の上映時間で、実は本国では100分づ
つ4回のミニシリーズでテレビ放送されたもののようだ。因
に3部作の1作目もミニシリーズと記録されている。
という作品だが、『輝ける青春』を期待して行くと、第1部
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04月15日(日)
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