ID:47635
On the Production
by 井口健二
[460095hit]

■相馬看花、モバイルハウス、オレンジと太陽、キリマンジャロ、ブラック・ブレッド、コラボ・モンスターズ、ブラックパワー、赫い髪
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『相馬看花−第一部 奪われた土地の記憶』
2009年6月紹介『花と兵隊』や、今年1月紹介『311』に
も同行していた松林要樹監督が、改めて福島原発災害の被災
地区で取材した作品。
作品は、2011年3月11日午後2時48分の東京世田谷にある監
督の自宅3畳間から始まり、4月3日、支援物資を運ぶ友人
のトラックに同乗して被災地に向かった監督によって取材が
開始される。
そこで監督は地元南相馬市の市議会議員を務める女性と知り
合い、警戒地区に指定された自宅近所のパトロールに向かう
女性議員に同行する。そこは津波も到達せず一見平穏そうに
見えるが、住民の居ない家の玄関が開いていたり、窓ガラス
が破られている家もある。
そんな被災地の現状が描かれ、やがてそれは恐らく女性議員
の政治基盤であったのであろう仲間と開いた地元産品の直販
所を再訪する姿や、仲間の中で唯一亡くなった女性を追悼す
る姿などに繋がって行く。
そして原発立地への歴史に踏み込み、そこでは太平洋戦争以
前に軍の飛行場が在ったという話や、その土地を何時の間に
か西武の堤が手に入れ、原発の誘致に繋げていったという背
景なども語られる。
さらに、当時は原発反対を唱えると共産主義者と見做される
という風潮から、反対運動が封じ込まれていった経緯や、当
時それによって職を得たという人々などが取材され、彼らが
一様に無念さを滲ませる姿などが写し出される。
その一方で監督は、実際に被災者の一員となって避難所暮ら
しを開始し、彼らと寝食を共にしながら取材を続けて行く。
そこは多少「良いのか?」という感じはしたが、それでこそ
語られた部分も在ったようにも思えたものだ。
なお映画では他に、女性議員が結婚式を挙げたという「相馬
野馬追」にも関わる相馬小高神社の惨状や、その前に咲き誇
る桜の姿。さらに東京で逮捕者も出た「反原発」デモの様子
や「記者クラブ」に所属していない監督への取材不許可の状
況なども描かれている。
僕は、1月の『311』の紹介の最後で「福島原発に関して
は再度取材すべし」と書いておいたが、それはちゃんとやっ
てくれていたようだ。そして本作はまだその第1部。松林監
督は『花と兵隊』の時も取材に2年半以上を費やしたようだ
が、今回はさらに長丁場の取材が続きそうだ。

『モバイルハウスのつくりかた』
2008年2月紹介『船、山にのぼる』などの本田孝義監督が、
「建てない建築家」と呼ばれているらしい早稲田大学建築学
科卒業の建築家坂口恭平の姿を追ったドキュメンタリー。
坂口は2004年に路上生活者の住居を写した写真集が評判にな
り、その後の2009年には自らも多摩川の河川敷での生活を体
験しているそうだ。そして今回のモバイルハウスは、2010年
11月に建設を開始した。
総製作費は26,000円。室内は2畳ほどで床下に4個の車輪を
付けて移動可能にし、駐車場などに法律上の問題なく置くこ
とができる。ただし実際の路上走行は問題が在るらしく、完
成品の移動にはトラックを使用していた。
さらにソーラーパネルと自動車用蓄電池を装備し、シガーラ
イターを繋いでそこに接続可能な機器が使用できる。その接
続可能な機器には、照明器具はもちろんPCや携帯電話の充
電も可能なようだ。
という多摩川河川敷でのモバイルハウスの建設というか製作
の様子から、それを吉祥寺の駐車場に運搬して設置する様子
などが描かれている。
ただし、この運搬を行ったのは2011年3月12日だそうで、そ
の被災地の様子などは判り始めている時期のようだが、建築
家はこのモバイルハウスの製作で得た知識を被災地に持って
行こうとはしない。

[5]続きを読む

04月01日(日)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る