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On the Production
by 井口健二
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■けの汁、別離、きっとここが帰る場所、KOTOKO、シネマ歌舞伎・高野聖、裏切りのサーカス、ファウスト+Oscar,VES
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。 ※
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『けの汁』
つがる市フィルムコミッション製作による33分の短編作品。
昨年5月地元公開され6月の第20回あおもり映画祭で上映さ
れた作品が、「東日本大震災復興支援上映プロジェクト」の
一環として、3月11日に東京芸術学舎・外苑キャンパスで上
映されることになり試写が行われた。
主人公は、高校時代に東京から津軽に転校してきた少年。そ
の少年はちょっとした偶然もあって同級生の女子と付き合う
ようになり、やがて愛を実らせて結婚する。それから30年ほ
どが経った祭りの日、都会に出ていた1人娘が恋人を連れて
帰ってくる。
そんな娘たちのため地元料理の「けの汁」を作って饗う主人
公だったが、そんな主人公の姿に、娘は何か不思議な雰囲気
があるとつぶやいている。
主演は、青森出身フォーク歌手の三上寛と、2007〜2009年の
「中学生日記」で最年少の先生役を務めたという浜丘麻矢。
他に元青森放送アナウンサーの経歴もある2006年『暗いとこ
ろで待ち合わせ』などの小林あずさ、2004年『仮面ライダー
剣』などの天野浩成、2004年12月紹介『カナリア』の石田法
嗣らが脇を固めている。
脚本と監督は、2008年12月紹介『トミカヒーロー/レスキュ
ーフォース』の後番組『レスキューファイアー』の監督や昨
年5月紹介『デンデラ』の助監督なども務めた千村利光。
お話は有り勝ちという感じのものではあるが、三上の朴訥と
した感じや浜丘の結構ピュアな感じもそれなりに良い雰囲気
で捉えられていた。また登場する馬っこ祭りというものも興
味深かった。
全体として端折るべきところはちゃんと端折って、純粋な物
語だけが際立つように丁寧に描かれている。33分の上映時間
にしてはしっかり物語が描かれている点にも感心したところ
だ。
なお題名の「けの汁」は、大根、人参、ごぼう、わらび、ふ
き、ずんだ(大豆)、凍り豆腐、こんにゃくなどの具沢山の
椀もので、謂れはいろいろあるようだが中々美味しそうに見
えるものだった。
『別離』“جدایی نادر از سیمین Jodái-e Náder az Simin”
昨年のベルリン国際映画祭で最高賞の金熊賞と、男優賞、女
優賞の3冠を独占した他、すでに世界の74冠に輝いているア
スガー・ファルハディ監督作品。今年のアカデミー賞では外
国語映画部門と脚本賞部門の候補にもなっている。
主人公は家族と共に海外移住の準備を進めている主婦。しか
し夫には介護の必要な父親がいて、彼女は離婚も考えなくて
はならなくなる。そして夫も離婚は了承するが、1人娘の養
育権を巡って対立が始まる。
それでも取り敢えず妻が別居を始めた一家では、父親の介護
のために人を雇わなくてはならなくなるが…。伝を頼って来
て貰った女性の仕事は彼女の夫には内緒だった。しかも信心
深い女性は老人と言えども男性の裸体を観ることができなか
った。
そんな様々な制約の中で発生したちょっとした手違いが、や
がて2つの家族を巻き込んだ大きな騒動へと発展して行く。
社会情勢や宗教上の問題など、我々の生活とはかけ離れた部
分も多い作品ではあるが、同じ地球上にこのような生活を送
っている人々が現にいることを忘れてはいけない、そんなこ
とを思わさせてくれる作品ではあった。
しかしその一方で男尊女卑や他人との争いなどには、それが
人間の本性を現しているような感じもしていろいろ考えてし
まう部分も多い作品だった。これらは必ずしも宗教に絡んで
の問題だけではない。
その一方で、このような国でも女性の立場は向上しているこ
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02月27日(月)
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