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On the Production
by 井口健二
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■モンスターズクラブ、寒冷前線コンダクター、ある秘密、SHAME、青い塩、ほかいびと、僕等がいた、私が生きる肌、捜査官X+VES賞
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
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『モンスターズクラブ』
2005年7月紹介『空中庭園』などの豊田利晃監督による最新
作。アメリカの爆弾魔セオドア・カジンスキー(通称:ユナ
ボマー)に着想を得て、雪深い森の中で暮らす1人の男の姿
が描かれる。
主人公は森の中で1人で暮らしている。それでも毎日の身な
りはちゃんと整え、森では鹿や兎を撃ってその肉を調理して
食糧に当てている。それは世捨て人のようでもあるが、その
一方で彼は爆弾を作り、企業トップなどへ送り付けていた。
何故彼はそのようなことをしているのか、その謎が彼の前に
現れる両親や兄たちの幻影によって解き明かされて行く。と
言っても動機などが具体的に明かされるのではなく、作中で
宮澤賢治の詩「告別」が引用されるように、それは象徴的に
描かれる。
しかしそこにあるのは、ユナボマーが考えていたかも知れな
い社会への不満であり、翻ってそんな社会に打ち勝てない自
分への失望かもしれない。そんな社会に順応できない男の姿
が描かれる。
主演は、前回紹介『僕達急行』にも主演していた瑛太。他に
窪塚洋介、ミュージシャンのKenKen、草刈正雄の娘の草刈麻
有、2011年1月にドキュメンタリーを紹介したパフォーマー
のピュ〜ぴる、松田美由紀、國村隼らが共演している。
なお監督は、本作の脚本を書くに当ってユナボマーをかなり
研究したようだ。従って本作に登場する主人公が暮らす山小
屋や、製造する小包爆弾の形状などは全て現物に則している
ものだそうだ。
とは言え、ユナボマー自身は司法取り引きによってほとんど
裁判も行われないまま終身刑に服しており、爆弾魔が本当に
何を考えていたかは推測するしかない。一方で監督には山中
で1年間1人暮らしをした経験があり、それらが重なって本
作が作り出されたようだ。
だが作品は多分に観念的で、それらを明確に理解することは
凡人には難しい。ただ幻想ということでは自分のテリトリー
に近い作品であるようにも感じるし、その点ではあまり違和
感もなく観ることができた。

『寒冷前線コンダクター』
1994年に第1巻が出版されて以来、外伝を含めて40巻以上を
出版、累計発行部数で400万部が売られているという秋月こ
お原作「富士見二丁目交響楽団シリーズ」の映画化。
2011年6月紹介『あの、晴れた青空』などの「たくみくん」
シリーズも原作本は累計発行部数が400万部を超えているそ
うだが、本作もそれと類似のBLをテーマとした作品だ。た
だし「たくみくん」シリーズは早くから映像化もあったが、
本作は今回が初映画化。そんな満を持した作品だ。
主人公は、郊外都市という設定?の富士見市にある市民交響
楽団のコンサートマスター。その市には行政がバックアップ
するセミプロ楽団もあるが、こちら本当に市民だけの素人楽
団だ。ところがそこに全国規模の楽団で副指揮者の男性が指
揮者として就任する。
しかもこの指揮者はかなりの上から目線で指導を開始し、主
人公はのっけから印象が悪くなってしまう。しかしその指導
は適切で楽団のレヴェルはどんどん高みに引き上げられる。
それでも指揮者の存在自体が主人公には許せなかった。
さらに彼が密かに思いを寄せていた女性までもがその指揮者
に思いを寄せ始め、耐えられなくなった主人公はついに退団
を決意するのだが…
本作の映画化が何故今まで待たれていたかと言うと、「たく
みくん」シリーズでは第5作にして描写がかなりのレヴェル
になったものだが、本作では最初から…と言うところかな。
実際、これがかなり強烈に描かれていた。
でもまあそれは、原作のファンには先刻ご承知のことなのだ

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02月19日(日)
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