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On the Production
by 井口健二
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■戦火の馬、善き人、すべての女に嘘がある、ヒューゴの不思議な発明、三国志英傑伝・関羽、ハンター、英雄の証明、きつつきと雨+年末挨拶
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
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『戦火の馬』“War Horse”
11月に『タンタンの冒険』を紹介したばかりのスティーヴン
・スピルバーグ監督の実写による最新作。因にスピルバーグ
監督の実写作品は、2008年『インディ・ジョーンズ/クリス
タル・スカルの王国』以来になるものだ。
原作はイギリスの作家マイクル・モーパーゴが1982年に発表
した児童文学。その原作から本作では、2000年『リトル・ダ
ンサー』などのリー・ホールと、2003年12月紹介『ラブ・ア
クチュアリー』などのリチャード・カーティスが脚色してい
る。
なお同じ原作からは、2007年にニック・スタフォードがロン
ドンで舞台化し、2008年のオリビエ賞や2011年にはアメリカ
のトニー賞で5部門に輝いた作品があり、スピルバーグはそ
の舞台を観て触発され、それから7カ月で本作の撮影に漕ぎ
着けたとのことだ。
物語の背景は第1次世界大戦。その開戦の少し前にイギリス
の農村デヴォンで1頭のサラブレッドが誕生する。母馬の許
で元気一杯に育ったその仔馬は競売で小作農の一家に買われ
るが、それは必ずしもその家に幸運はもたらさない。
やがて戦争が始まり、農家の息子によって調教されたサラブ
レッドは軍用馬として徴用される。しかし海を渡って赴いた
欧州戦線では、さらなる数奇な運命がその馬を翻弄し、独仏
の最前線での人と馬のドラマが繰り広げられる。
テーマ的には戦争ものということになるが、本作で描かれる
のはその悲惨さであり、それによって翻弄される馬とそれに
関る人々の姿だ。そしてそれは特に第1次世界大戦という背
景によってより際立つものになっている。
出演は、農家の息子にジェレミー・アーヴァイン、その母親
に2008年1月紹介『ウォーター・ホース』などのエミリー・
ワトスン、地主役に今年10月紹介『ロンドン・ブルバード』
などのデヴィッド・シューリス。
他に、今年6月紹介『マイティ・ソー』に出演のトム・ヒデ
ルストン、昨年7月紹介『魔法使いの弟子』に出演のトビー
・ケベル、今年9月紹介『サラの鍵』に出演のニエル・アレ
ストリュプらが脇を固めている。
舞台劇の影響なのか、本作でも場面が順に転換する構成で、
その場面ごとにドラマが描かれる。それは多少ぶつ切りの感
じもするが、作者の言わんとするところは明確に伝わってく
るものだ。それに登場する馬の名演技も見事だった。

『善き人』“Good”
1981年にロンドンで初演され、同年52歳で他界したイギリス
の劇作家C・P・テイラーの遺作となった戯曲の映画化。
ナチスが台頭する第2次大戦前のドイツを舞台に、その流れ
に逆らいながらも歴史に巻き込まれてしまう大学教授の悲劇
を描く。
主人公は、第1次大戦に出兵し、その後は学業を納めてベル
リン大学で文学の教鞭を取りながら小説も発表しているアー
リア人の男性。彼には幼馴染みで共に戦場にも行った精神科
医がいたが、妻の主治医でもある医師はユダヤ人だった。
その医師には国外に去ることを勧める主人公だったが、医師
はまだ仕事が残っていると応じず、主人公もまた事態に進捗
には甘く考えていたようだ。そんな主人公がナチスの検閲官
に呼び出され意外な申し出を受ける。それは彼自身と母国の
将来を変えて行くものだった。
オリジナルの戯曲は、突然主人公が歌い始めたり、時間軸が
非直線的に連なるなど、かなり難解なものだったようだ。映
画化では、その特徴は継承しながらも本来のテーマがより判
り易くなるように脚色がなされている。
主演は、1981年の当時は駆け出しで、オーディションを受け
るために訪れたロンドンで初演の舞台を観たというヴィゴ・

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12月25日(日)
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