ID:47635
On the Production
by 井口健二
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■無言歌、アーチ&シパック、J・エドガー、アフロ田中、ペントハウス、一万年愛してる、ミッション:インポッシブル-GP、ピアノマニア
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
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『無言歌』“夾辺溝”
2010年のヴェネチア映画祭で特別上映された中国・西安出身
のドキュメンタリー監督ワン・ビンによる初の長編劇映画。
1950年代後半の「反右派闘争」に於ける悲惨な収容所の模様
を、見事な演出と映像美で描き切っている。
1956年、毛沢東の提唱による「百花斉放・百家争鳴」の方針
で、中国では体制批判を含む政策論争が各地で巻き起こる。
ところがその翌年、北京政府は一転して「反右派闘争」を開
始、前年に体制を批判した多数の人々が拘束されて収容所に
送られることになる。
この経緯が、意図的な謀略であったか否かについては未だに
結論が出ていないようだが、毛沢東の個人独裁による恐怖政
治の始まりがこれによって告げられたものだ。
そして本作は「反右派闘争」に続く「反右傾闘争」が最盛期
だった1960年を背景としている。物語の舞台は中国西北部に
所在する夾辺溝労働教育農場。農場といっても名ばかりのそ
の場所は、周囲は樹木1本生えていない荒野の中だ。
そんな場所に収容された右派と呼ばれる人々は、日々灌漑用
水路と思われる溝の掘削や、自らが風と寒さ凌ぐ塹濠掘りに
追われている。一方、その頃の中国では政策の失敗から大飢
饉が発生し、収容所への食料の供給も跡絶えてしまう。
これに対して収容所の幹部たちは、収容された人々に家族か
らの食料の仕送りを要請するのだが…。そんな中で収容所で
は収容者が次々に亡くなって行き、中には逃亡を企てる者も
現れ始める。
こうした収容所の悲惨な様子が、ドキュメンタリストの鋭い
視線で克明に綴られて行く。それはある意味で収容者の人間
性をも奪い去る強烈な姿だ。そんな過酷な物語が風雪の荒野
を背景に繰り広げられる。
出演者の殆どは無名の新人だが、中で収容所を訪れる収容者
の妻を演じたシュー・ツェンツーは、本作の後で大スターと
も共演する人気者になったようだ。他には、実際の収容所の
生残りの人も出演しているそうだ。
毛沢東独裁政権による恐怖政治については、その後の「文化
大革命」や「下放政策」などの悲劇に関しては、近年いろい
ろな中国映画作品によっても紹介されている。しかしそれに
先立つ「反右派闘争」に関しては今だにタブーの部分も多い
ようだ。
実際、2007年には政府に対する補償問題などの高まりから、
「反右派闘争」に関する報道の自粛が中国メディアに要請さ
れていたりもしている。そんな中での作品。因に本作の国籍
は、香港=フランス=ベルギーの合作映画となっている。

『アーチ&シパック・世界ウンコ大戦争』“아치와 씨팍”
2007年のソウル国際カートゥーン&アニメーション・フェス
ティバルで大賞を受賞、その後のシッチェス・カタロニア国
際映画祭などでも受賞している韓国製アニメーション作品。
元は教育用CD−ROMに挿入されるアニメーションなどを
制作していたクリエーターが、それらを纏めた作品で1997年
のフェスティバルに応募し大賞を受賞。その勢いで企画した
ものの、それから完成までには6年の歳月が必要だったとい
う作品だ。
その企画の意図は、「ディズニーや日本アニメにないもの」
だったそうだが、その結果が表記の副題になってしまったも
のだ。ただし映像には直接ソレが出てくる訳ではなく、その
辺はそれなりの節度をもって作られている。
物語の背景は、地球上のエネルギー資源の殆どが枯渇してし
まった時代。その時代に最後に残されたエネルギー資源は人
間の排泄物だった。そこで政府は国民の肛門にICチップを
埋め込み、その管理を徹底させていた。

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12月04日(日)
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