ID:47635
On the Production
by 井口健二
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■はさみ、瞳は静かに、エリート・スクワッド、夢二、ピザボーイ、マシンガン・プリーチャー、アーサー・クリスマス、しあわせのパン
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。 ※
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『はさみ』
2008年11月紹介『大阪ハムレット』などの光石富士朗監督に
よる東京中野区の理容美容専門学校を舞台にした作品。
主人公は専門学校美容科の若手女性教師。主にハサミ(シザ
ース)によるカットの実技を教えているが、彼女の教室には
様々の問題を抱えた生徒たちがいる。その中から3人の生徒
が主に取り上げられる。
その1人目は母親の死後に引き篭もりになっていたという男
子生徒。2人目は自らの技術に行き詰まってしまっている女
子生徒。そして3人目は理容科で抜群の成績を収めている女
子生徒だったが…
そんな生徒たちに対して主人公は、共に悩みながら問題解決
の糸口を探って行こうとする。しかし生徒たちにはさらなる
試練が待ち構える。物語の舞台は理容美容専門学校だが、生
徒たちの抱える悩みは普遍的なもので、その解決法も特別で
はない。
ただし、その間に理容美容専門学校ならではの至言のような
ものが挿入され、それが結構上手く填っているのが本作の良
さでもあり、脚本の巧みさのようにも感じられた。
出演は、教師役に先月紹介『指輪をはめたい』などの池脇千
鶴、生徒役に2008年1月紹介『うた魂♪』などの徳永えり、
2010年『十三人の刺客』などの窪田正孝、それにお笑いコン
ビ「大好物」のなんしぃ(映画初出演)。他に、竹下景子、
烏丸せつこ、石丸謙二郎らが脇を固めている。因に、池脇は
前作に続いて指がばん創膏だらけの役だ。
手に技術を付けたいと頑張る若者たちと、それを正しく導こ
うとする教師たちの物語で、常識的に考えても悪くなりよう
のないお話。それをさらに光石監督が見事に感動的に盛り上
げている。
因に本作には、日本PTA全国評議会特選、映倫諮問機関の
年少者映画審議会推薦、厚生労働省社会保障審議会推薦など
が付いているようだ。特に厚生労働省の推薦は物語の背景か
らも判りやすい。
『瞳は静かに』“Andrés no quiere dormir la siesta”
1976年から1982年まで続いたアルゼンチンの軍事政権。その
下での子供たちの姿を描いた作品。
1977年夏から1978年夏までの1年間に亙る物語。主人公はそ
の間に8歳から9歳になる少年。少年は兄と母親と共に暮ら
していたが、進歩的な母親は近所の若者の荷物を秘密に預か
るなど、政治的な活動もしていたようだ。
ところがその母親が突然死去し、少年は別居していた父親と
共に祖母の家に暮らすことになる。その父親は牛乳は温めて
から飲むとか、子供たちにはシエスタを命じるなどかなり保
守的な感じだ。
一方、祖母は少年の願いを聞き入れるなどしてくれるが、そ
の祖母は近所の情報に何時も目を光らせ、何事も家族に類が
及ばないように気を使っていた。そして子供たちには何も起
きてはいないかのように振るまい続けていた。
子供たちには「何が起きているか」教えないようにしている
大人たち。しかし子供たちの目はそんな大人たちの真意を見
抜き、そしていろいろな影響を受けて行く。それは必ずしも
良いとばかりは言い切れない。
2004年7月紹介『ジャスティス』や同年9月紹介『ブエノス
アイレスの夜』、さらに昨年10月24日付「東京国際映画祭」
で紹介した『隠れた瞳』など、軍事政権下のアルゼンチンを
描いた作品は後を断たないが、何故そこまで描かれるのか。
軍事政権の崩壊から四半世紀が過ぎても、いまだに消え去ら
ない恐怖。それは子供の頃に刷り込まれた恐怖。そんな恐怖
の姿を子供の目を通して描いたことで、正にリアルな恐怖と
なって甦る作品となっている。
脚本と監督は、1966年サンタ・フェ生まれのダニエル・ブス
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11月20日(日)
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