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On the Production
by 井口健二
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■第24回東京国際映画祭(2)
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※今回は、10月22日から30日まで行われていた第24回東京※
※国際映画祭で鑑賞した作品の中から紹介します。なお、※
※紙面の都合で紹介はコンパクトにし、物語の紹介は最少※
※限に留めているつもりですが、多少は書いている場合も※
※ありますので、読まれる方はご注意下さい。     ※
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《コンペティション部門》(続き)
『J.A.C.E./ジェイス』“J.A.C.E.”          
ギリシャ・ポルトガル・マケドニア・トルコ・オランダ合作
による犯罪社会に生きる男の数奇な人生を描いた作品。映画
祭では無冠に終ったが、僕は本来なら本作が監督賞に値する
と思っていた。
ギリシャの犯罪社会で有名を馳せた殺し屋ジェイスが死体で
発見され、その殺し屋の謎に満ちた人生が検証される。そこ
には物乞いから臓器売買まで、子供を利用する様々な犯罪組
織の実態が描かれ、その中で殺し屋として成長して行く少年
の姿が描かれる。
しかしその一方で、少年は幼い頃から大事に持ち続ける「パ
パの写真」を頼りに実の父親の姿を追い続け、その過程では
象の飼育場など様々な環境が彼の人生を彩って行く。そして
彼の人生が行き着いた先は…
題名は主人公の腕にある入墨に記されたもので、それが主人
公の呼び名になっているが、同時に各文字にピリオドが付さ
れていることから解るようにある言葉の頭文字にもなってい
る。その言葉の意外な意味などは映画の興味を面白く彩って
いた。
しかし肝心の父親の真相の方は、僕としてはちょっと物足り
ない感じがしたもので、実際このような話が最近多く作られ
ている中では時流に乗っているとは言えるが、もう少しイン
パクトのある結末を考えて欲しかったという感じはした。
ただし本作も実話に基づいているようで、これが実話という
のは凄いという感じもするが、実話なら仕方がないという感
じもしたところだ。
映画は各章ごとにサブタイトルの付された上映時間153分の
堂々たる作品で、登場人物の数もかなり多く。それらを整然
と纏め挙げた監督の手腕にも感服する作品だった。

『より良き人生』“Une Vie Meilleure”
2007年2月紹介『チャーリーとパパの飛行機』などを手掛け
たセドリック・カーン監督が、より良き人生を目指して奮闘
し、運命に翻弄されるカップルの姿を描いたフランス映画。
主人公は35歳のコック、彼は職を求めて訪れたレストランで
28歳子持ちのウェイトレスと出会い、夢を語り合った2人は
一緒に暮らすようになる。そして郊外に素敵な建物を見つけ
た2人は銀行ローンを借りて改築に乗り出すのだが…。
完成したレストランは法律的な問題で営業許可を得られず、
さらに銀行ローンも手続き上の問題で条件を厳しくされてし
まう。この状況に切羽詰った女性は、手続きのためフランス
に残らざる得ない主人公の許に子供を残し、賃金の良いカナ
ダに出稼ぎに行くが、やがて音信が途絶えてしまう。
理想のレストランを目指して頑張る2人が法律や規則などの
様々な壁に阻まれる。日本でもありそうなお話だが、そんな
物語がフランスとカナダの大西洋を跨いで展開される。こう
なるとちょっと日本とは条件が違ってくるが、それでも描か
れる内容は夢と理想を求めて奮闘するカップルの姿であり、
そこには誰もが応援したくなるような素敵な物語が描かれて
いた。
以前に紹介した監督の作品も、厳しさの中に暖かい人間味が
描かれていたが、本作でもそんな厳しくて暖かい物語が描か
れていた。僕はこの映画で奮闘する主人公に男優賞を贈りた
いと思ったものだ。

以下はコンペティション以外の作品で、
《アジアの風》
『哀しき獣』“황해(黄海)”
2008年『チェイサー』が評判となったナ・ホンジン監督の新
作。中国北部の朝鮮族自治州に住む男性が、ギャンブルで抱
えた借金を解消して貰える約束で殺人を請負、韓国に密航す

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10月31日(月)
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