ID:47635
On the Production
by 井口健二
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■沈黙の春…、夜明け…、LIFE IN A DAY、ウィンターズ・ボーン、地球にやさしい…、ラビット・ホラー、ホワイト、チェルノブイリ+Ranger
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
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『沈黙の春を生きて』
2007年に『花はどこへいった』を発表し、ベトナム戦争中に
使用された枯れ葉剤の被害/後遺症の問題を追求した坂田雅
子監督が、再び同じ問題を取り上げ、その後の3年間を追っ
た作品。
レイチェル・カーソンが1962年に発表した『沈黙の春』は、
ケネディ大統領の関心を呼び、アメリカでの農薬DDTの使
用禁止を実現した。しかしその一方でケネディ政権は1962年
1月にベトナム戦争での枯れ葉剤の使用を許可、その散布は
1971年まで続けられ、被害は今に及んでいる。
僕は、1983年に刊行された中村梧郎カメラマン撮影『母は枯
れ葉剤を浴びた』を手にしたときの衝撃が忘れられないが、
その当時はベトナムでの被害情報が中心で、シャム双生児と
いう名も残る土地柄から、遺伝的な疾患との反論も多かった
ものだ。
しかしその後にアメリカでも、ベトナム帰還兵のガン罹病率
の増加やその子供に奇形が発生し、枯れ葉剤の被害は動かし
がたいものになった。それでも現在に至るもアメリカ政府は
その責任を認めておらず、製造元の化学会社の責任追求もさ
れていないという。
その一方で民間団体による帰還兵やその子供に対する支援は
行われているようだが、実は映画の中でもその孫に対する調
査の状況などは明らかにはされていなかった。それはもしか
したらアメリカでは孫の代には影響が残らなかったのかも知
れない。
ところがベトナムには、ダイオキシン残留のホットスポット
が各地に残り、それが被害を継続させているようだ。実際映
画の中には、1971年枯れ葉剤の散布が停止された以後に生ま
れた被害者と思われる子供たちの姿が紹介されている。
現在、東京近郊でも放射能のホットスポットの所在が報告さ
れているが、化学物質と放射能の影響は同じと考えることも
できるもの。10年先の東京の現実が本作の中にもあるのかも
知れない。
さらに映画では、片下肢と左手の指が欠損していながらも、
それを克服してマーチングバンドのトランペット奏者になっ
たというアメリカ人被害者の女性が、視力を奪われながらも
一弦琴の奏者になったベトナム人被害者の男性と交流する感
動的なシーンも描かれていたが、これも数10年後の東京の姿
かも知れないものだ。

『夜明けの街で』
2006年10月紹介『手紙』などの原作者で、人気ミステリー作
家の東野圭吾による初のラヴストーリーと言われる小説の映
画化。
主人公は、建設会社で課長職、妻と1人娘の家庭を持つ平凡
な男性。そんな主人公がある夜、学生時代からの親友とバッ
テングセンターを訪れた際に、彼の職場に最近入って来た派
遣の女子社員の姿を見付ける。
そして親友と共に女性をカラオケなどに誘った主人公は、泥
酔した彼女を家まで送ることになってしまうが…。映画は最
初に「不倫をする奴なんて馬鹿だと思っていた」という主人
公のモノローグで始まり、その地獄に引き摺り込まれて行く
様が描かれる。
しかも東野の描く不倫は一筋縄では行かないもの。そこには
胸をナイフで一突きにされた死体なども絡んでくる。そして
主人公が行き着く果ては…。
男性の不倫願望? そんな男性の目から観ているとかなり痛
いところを突かれる感じの作品だ。でもまあここまで仕組ま
れているとね。しかも女性の方に目的があって、それが男性
に対しては悪意がないとすると、これはかなり納得もできて
しまう物語だった。
でも怖い怖い。確かにこの男が馬鹿だと言われればその通り
だが、こんな風にされたら男性の大半は引っ掛かってしまう
だろうし、ここから逃れる術なんてそう簡単には見付からな
いだろう。本当に怖いお話だ。

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08月14日(日)
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