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On the Production
by 井口健二
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■八日目の蝉、バビロンの陽光、光のほうへ、星を追う子ども、大木家のたのしい旅行、孫文の義士団+製作ニュース
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。 ※
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筆者は東京都在住者ですが、東北地方の大地震及び大津波は
衝撃でした。被害に会われた方へのお見舞いと、早急な復旧
をお祈り申し上げます。
『八日目の蝉』
角田光代原作ベストセラー小説の映画化。
21年前に発生した乳幼児誘拐事件。その事件は4年後に解決
し、子供は両親の許に戻るが、子供にとって4年間を母親と
思っていた女の存在は何だったのか。そして両親、特に実の
母親に懐けない子供の存在とは…
「優しかったお母さんは、私を誘拐した人でした」という衝
撃的な宣伝コピーが目引く作品だが、その内容はさらに衝撃
的だったと言えそうだ。
誘拐犯は父親の不倫相手、しかも妊娠中絶の後遺症で子供の
出来ない身体になっている。そしてその直後に妊娠した本妻
の子供が誘拐された。それもちょっとした偶然の重なりから
起きてしまう事件。その子供を犯人は実の子の様に可愛がっ
て育てる。それは同時に警察の目を逃れながらの厳しい子育
てだった。
不倫、妊娠中絶、それに物語の一部を彩るカルト教団。人類
が自然界の一員だったとしても、ここに描かれるのは自然界
の生物では有り得ない事象ばかりだろう。人間が人間だから
こそ起こしてしまう恐ろしい事件が描かれる。
そしてその事件は、被害者である少女に大きな心の傷を残し
てしまうのだが…。育ての母も実の母親も否定して成長しな
ければならなかった少女が、ある切っ掛けから過去を振り返
り始めたとき、事件は別の様相を見せ始める。
出演は、2007年5月紹介『怪談』などの井上真央と、2010年
10月紹介『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』などの永作博
美。他に小池栄子、市川実和子、森口瑶子、平田満、田中哲
司、劇団ひとり、余貴美子、田中泯、風吹ジュン。
監督は、2010年3月紹介『孤高のメス』などの成島出。脚本
は、前々回紹介『軽蔑』などの奥寺佐渡子。
物語は、永作が演じる誘拐犯の女性の逃亡生活の様子と、井
上が演じる被害者だった少女の今日の姿が交互に描かれ、そ
の結論は最初から判っているようなものではあるが、そこに
至る少女の内なる葛藤が見事に描かれているとも言える。
上映時間は2時間27分と長尺の作品だが、物語のテンポは決
して遅い訳でもなく、むしろ着実に物語が描かれて行く感じ
がした。それだけの深い内容の作品が描かれていると言えそ
うだ。
『バビロンの陽光』“ابن باب”
昨年のベルリン国際映画祭で、アムネスティ映画賞と平和映
画賞をW受賞した作品。この他にもカルロヴィヴァリ、シア
トル、エジンバラなど各地の映画祭で数多くの受賞に輝いて
いるようだ。
2003年春、フセイン政権の崩壊から2週間後の物語。イラク
北部に暮らすクルド人の少年とその祖母が少年の父親を探す
旅を始めている。その父親は南部ナシリアの刑務所にいると
の知らせがあったのだ。
そこで2人は道端でトラックを止め、最初はバグダッドへと
向かう。少年は父親から貰ったという縦笛を持っているがあ
まり上手には吹けないようだ。そしてバグダッドではナシリ
ア行きのバスを探すことになるが…
少年は町で知り合った子供の手伝いをして、その子が少年と
祖母の危機を救ったりもしてくれる。それは神の加護も信じ
たくなる出来事だった。しかし、ようやく辿り着いたナシリ
アの刑務所はすでに廃虚で収監されていた人々の姿はない。
さらに偶然に知り合った元兵士と共に父親の行方を探す旅は
続けられて行くが…。
バグダッド、ナシリア、そして題名にもあるバビロンと、戦
闘によって廃虚となった砂漠の町が描かれる。それは砂漠化
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03月13日(日)
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