ID:47635
On the Production
by 井口健二
[460140hit]

■軽蔑、サンクタム、塔の上のラプンツェル・3D、Lily+バンコク遠征記(後編)
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『軽蔑』
1992年に亡くなった芥川賞作家中上健次が残した最後の長編
とも言われる作品の映画化。
東京の新宿歌舞伎町でポールダンサーしていた女性と、その
歌舞伎町でヤクザのパシリの様なその日暮らしの生活をして
いた男性。そんな2人は以前から面識はあったが、男が女の
踊る店を襲撃した中で、咄嗟に男は女の手を引いて高飛びを
提案する。
そして2人がやってきたのは男の故郷の田舎町。そこで男に
は資産家の父親がいて、男は女を嫁にすると両親に宣言する
が、両親は女の出自が気に入らないようだ。それでも父親は
2人のためにマンションの1室を用立ててくれる。
こうして2人の暮しが始まり、男は叔父の店の手伝いなどで
地道に働き始めたりもするが、資産家の息子である男には周
囲の人々の関心も高く、昔の女や蔓んでいた仲間たちも現れ
始める。そんな中で男と父親との間で決定的な事件が起き、
女は男を残したまま都会へ帰って行くが…
何度も書いていると思うが、僕はチンピラものは物語として
好きではない。それは特に馬鹿が馬鹿を重ねて行く展開が気
に入らないのだが。本作の場合は、主人公たちは馬鹿ではあ
ってもそれなりに筋の通った行動で、その点では認めざるを
得ない作品だった。
それは互いを好きになってしまった男と女の止むに止まれぬ
行動であり、それがどんな結末を迎えようとも、それを受け
止めざるを得ない…。そんなぎりぎりの感覚が見事に描かれ
た作品のようにも感じられた。
主演は、昨年7月紹介『おにいちゃんのハナビ』や12月紹介
『まほろ駅前・多田便利軒』にも出演していた高良健吾と、
2002年『リターナー』や『…多田便利軒』にも出ていた鈴木
杏。特に鈴木は子役の頃から見てきたが、見事に女優として
開花してきた感じだ。
他に緑魔子、大森南朋、小林薫らが共演。さらに忍成修吾、
村上淳、根岸季衣、田口トモロヲらが脇を固めている。
監督は、2003年11月9日付「東京国際映画祭」の中で『ヴァ
イブレータ』を紹介している廣木隆一。2003年の作品でも寺
島しのぶから見事な演技を引き出していたが、今回は鈴木を
見事に開花させた。
脚本は、昨年3月紹介『パーマネント野バラ』や2009年7月
紹介『サマー・ウォーズ』などの奥寺佐渡子。こちらも女性
の心理を描くことには長けている感じの脚本家だ。
ただし、ポールダンスは元々女優さんには無理な注文のもの
で、それなりにアップの多用などで誤魔化してはいるが、こ
れは多少厳しい感じがした。両手のグリップを固定するなど
裏技を使っても良かった感じもしたが、それも危険だったの
かな…難しいものだ。

『サンクタム』“Sanctum”
ジェームズ・キャメロン製作総指揮の許、新水路の発見を賭
けてケイヴ・ダイヴィングに挑む冒険家の姿を3Dカメラで
追った作品。
舞台はパプア・ニューギニアの密林の中にぽっかりと開いた
陥没孔。そしてその底から広がる鍾乳洞。その大半は地下水
の中に水没し、そこをケイヴ・ダイヴィングで探索し、海に
抜ける水路を発見するのが冒険家たちのテーマだった。
しかし探索開始からすでに1カ月以上が過ぎ、スポンサーの
声も厳しくなり始めた頃に、そのスポンサーが恋人の登山家
を現地に連れて来るところから物語は始まる。そしてその現
場にはサイクロンも接近していた。
という展開ではほとんど先は読めてしまうようなお話だが、
取り敢えずはパプア・ニューギニアの密林や鍾乳洞の内部の
景観などが3Dカメラに納められていて、それは一見の価値
を生じさせている。
とは言うものの物語は支離滅裂で、リーダーである父親の指

[5]続きを読む

02月27日(日)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る