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On the Production
by 井口健二
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■ピュ〜ぴる、シリアスマン、お家をさがそう、ランウェイ☆ビート、ヨギ&ブーブー、四つのいのち、ブラック・スワン+ニュース
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
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『ピュ〜ぴる』
洋裁やニットのコスチューム作品及びそれを着てのパフォー
マンスなどで評価されている「ピュ〜ぴる」というアーティ
ストの姿を、2001年から2008年まで8年間に渡って撮影し、
2010年に発表されたドキュメンタリー作品。
監督・撮影・編集は、2001年の映画『ウォーターボーイズ』
などに俳優として参加していた松永大司。因に松永は、監督
としては2008年『蛇にピアス』のメイキング作品なども手掛
けているようだ。
元々クラブで遊び仲間だった監督が、アーティストから「自
分の生き様を撮って欲しい」と頼まれたのが始まりだったそ
うだ。そこで友人からヴィデオカメラを借りて撮影を開始す
るが、最初は撮る目的も撮り方も判らないままだった。
それが撮影開始から1年ほどして作品として完成させようと
思い立つ。ところがこの撮影には終りがないと気付き、そこ
で全体を2部作と考えてその第1部として完成されたのがこ
の作品。従って撮影は今も続けられているとのことだ。
という経緯は後でプレス資料を見て知った情報だが、確かに
試写を観ているとその経緯が判る作品だった。特に作品の前
半では、アーティストを写すのか作品を写すのかも明確でな
く、焦点ずれなどの技術的な問題も含めて「何だこりゃ」と
いう感じだった。
ところが映画が後半になり、アーティスト本人に焦点が絞ら
れてくると、それは一転してアーティストの魂の叫びを写し
取っているような衝撃的な作品になってくる。そこには正に
1人の人間の姿が描かれているものだ。
ただしそこに描かれている事柄自体は、僕自身の感性として
理解できるものではないが、アーティストであるピュ〜ぴる
自身の思いがそこに繋がったことに疑問は感じないし、その
決断の結果には反論の余地がない感じがした。
それにこの作品では、ピュ〜ぴるの存在を認めてそれを支援
する周囲の人たち(家族や監督を含む)の関係が暖かくて、
それは観ていて気持ちの良い作品だった。そのピュ〜ぴるが
これからどのように進化するのか、それも観てみたい感じが
したものだ。

『シリアスマン』“A Serious Man”
昨年のアカデミー賞では作品賞と脚本賞の2部門にノミネー
トされ、National Board of Review選出の脚本賞などを受賞
したコーエン兄弟監督の作品。
時代は1967年。舞台はアメリカ中西部ミネソタ州ミネアポリ
ス郊外の住宅地。主人公は、地元の大学で物理学を教えてい
る男性。2週間後に迫った息子のユダヤ教の成人式だけが気
掛かりだったごく平凡な主人公の日常が、ある日突然狂い始
める。
それは学内での成績を巡る問題や、主人公の家に居候してい
る無職の兄、家族や隣人や、頼んでもいないレコードクラブ
からの代金の督促に、さらにはコミュニティの中心であるユ
ダヤ教のラビまで、とにかくありとあらゆるトラブルが主人
公に降りかかる。
因に映画では、最初にユダヤの伝説という感じのシーンがス
タンダードの画面で描かれており、そこに暗示された不幸の
連鎖が主人公に襲い掛かっているのかな。でもそれは主人公
に提示されている訳でもなく、とにかく唯々不幸になり続け
る。しかもその結末は…
いやはや、元々不条理好きのコーエン兄弟だが、2008年3月
紹介『ノーカントリー』でオスカーの作品、監督、脚本賞を
トリプル受賞した後、2009年1月紹介『バーン・アフター・
リーディング』を挟んで描いた本作は、正にその極致を行く
ものになっていた。
それでまあ、その意味などはあまり深く追求しても仕方のな
いもののようで、とにかくこの不条理なトラブルに巻き込ま

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01月23日(日)
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