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On the Production
by 井口健二
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■ピラニア、ウォールS、わたしを離さないで、恋とニュースのつくり方、WE DON'T CARE、ランナウェイズ、カンフーサイボーグ+ニュース
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。 ※
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『ピラニア』
8月1日付と10月17日付でも紹介した「青春H」と題された
企画シリーズの第3弾。
前回まではそれぞれ2作ずつの紹介だったが今回は1作品だ
け。何故そうなったのか理由は紹介されていなかったが、作
品の出来としては今回の作品が一番完成度は高いと感じられ
たものだ。
主人公は吃音症の女性。彼女は勤め先の近所の公園で、事故
で不自由になったという脚を引き摺りながら手作りの弁当を
販売している男性に恋をしているが、その想いをなかなか言
葉にすることが出来ない。
そんな彼女に元高校教師という男が近づき、男は彼女に弁当
屋の男性との仲を取り持つことを申し出る。そしてその男の
お陰で彼女は弁当屋の男性と付き合い始め、やがて2人は夢
を共有するようにもなって行くが…
吃音症の女性に脚の不自由な男性、何とも遣る瀬ない感じの
登場人物。それにもう1人の男にしても、自分を教職から追
い遣った連中に復讐すると称して、自宅で育てたピラニアを
公園の池に放流しているような屈折した男だ。
そんな、殺伐とした現代社会の中では生きて行くだけでも苦
労の多そうな人々を登場人物に選んで、現実にも起きていそ
うなシビアな物語が展開されている。それは正に現代の縮図
とも言えそうな物語だった。
出演は8月紹介『ゴーストキス』にも出ていた白井みなみ。
前作の時は脇役の1人だったが、今回は主演で身体の露出も
バッチリだ。他には2008年12月紹介『へばの』などの吉岡睦
雄、2008年のテレビ『正義の味方』などの並木幹雄らが共演
している。
監督は昨年8月紹介『行旅死亡人』などの井土紀州。脚本は
その井土監督の『犀の角』にも協力している椎名罹生。クレ
ジットでは単独になっているが、脚本家自身のサイトでは脚
本参加となっているから、多分監督との共同なのだろう。
脚本もしっかりしているし、俳優たちの演技も上記の3人に
関しては問題ない。シリーズの5作目にして一番安心して観
ていられる作品だった。
『ウォール・ストリート』
“Wall Street: Money Never Sleeps”
1987年公開で主演のマイクル・ダグラスにオスカー男優賞を
もたらした前作『ウォール街』と同じ世界観で新たな物語を
描いた作品。
物語の発端は2001年。前作の罪で懲役8年の刑に服していた
ゴードン・ゲッコーが刑期を終えて出所してくるところから
始まる。ところが他の出所者たちが皆家族らの出迎えを受け
る中で、ゲッコーを出迎える者はいない。
そして2008年、ゲッコーは自らの経済理論などをまとめた本
を出版し、再び話題の人物になり掛かっていた。
一方、若き証券マンのジェイコブは、非営利ニュースサイト
を運営する女性ウィニーと交際していたが、彼女こそはゲッ
コーの娘で、残された唯一の家族だった。しかし彼女は、父
親の存在を認めようとしなかった。
そんな折、ジェイコブの務める投資会社が悪質な風評被害に
よって倒産に追い込まれ、師と仰いでいた人物をも失う事態
となる。そしてエコロジー系の投資に精通している彼には、
ライヴァル会社から高待遇での誘いが掛かるが…
実は前作を観たときには、経済の動きに関する部分がほとん
ど判らなくて、結末になっても「ええ、そんなことが罪にな
るの?」という気分だった。しかしその後の世界経済の動き
は、正にその前作に描かれた通りで、改めてその恐ろしさを
知ったものだ。
そして約30年を経ての本作では、未だに反省の色もなくバブ
ルを操作して投資家を食い物にし、浮かれて動き回る金融族
の悪辣な手法が描かれ、これを現代では、前作の当時より判
りやすく観ることが出来た。
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12月05日(日)
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