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On the Production
by 井口健二
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■世界のどこにでもある場所、君を想って海をゆく、MAD探偵、食客2、ギャングスタ、戦火の中へ、HPと死の秘宝、ジャライノール
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。 ※
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『世界のどこにでもある、場所』
日本では数少ない映画監督と呼べる人の1人、大森一樹監督
による精神病の患者を描いた人間ドラマ。
物語の導入は、証券詐欺事件の首謀者にされてしまった投資
アナリストの男。警察や暴力団からも追われるようになった
その男は、最後の金で乗ってきたタクシーを降りて山路を歩
き出す。ところがそこに暴漢が現れ男は昏倒させられる。
そして目を覚ました彼の前に現れたのは、ちょっと調子の外
れた演奏をしながら行進するマーチングバンドと象と話をし
ている男、それに新聞記者と女性歌手。さらにテロリスト退
治に情熱を燃やす自衛官に高校教師、そして医師。
そんなちょっと怪しげだが親しみも感じられる連中が、その
日は貸し切りにされた遊園地と動物園を闊歩していた。果た
して彼らのしていることは? そしてそこには、不審者捜査
の警察官や遺産相続の弁護士などもやってきて…
大森監督は、フィリップ・ド・ブロカ監督の1966年作品『ま
ぼろしの市街戦』からインスパイアされてこの物語を作った
のだそうで、ある種の日常と非日常が綯い交ぜにされて物語
が展開されて行く。
ただし1966年の作品には反戦という大きなテーマがあったの
に対して、本作ではそれが医療と司法の関りなどちょっと特
殊なテーマを除いてはあまり明確ではなく、監督の意図が計
り切れないものになっていた。
その一方で、精神病患者をテーマにした作品は、2007年8月
紹介『クワイエットルームにようこそ』や先月紹介『酔いが
さめたらうちに帰ろう』など何作か観て来た中で、特に医師
免許を持っている大森監督らしさのようなものもあまり感じ
られなかった。
ただまあ本作は、当初は宝塚ファミリーパークの閉園に合せ
て10年前に企画されたものだったそうで、その条件ではあま
り過激なものは作れなかったのかも知れない。そんな中で日
常と非日常という不思議な雰囲気は出されていたようだ。
出演は、三宅裕司主宰の劇団スーパー・エキセントリック・
シアターのユニットで、そこに水野久美、佐原健二の両ベテ
ランが客演している。
『君を想って海をゆく』“WELCOME”
海峡の対岸に暮らす恋人を想い、海峡を泳いで渡ろうと試み
る若者の物語。
SF/ファンタシーなど自分のテリトリーの作品では仕方が
ないが、それ以外の作品は、出来るだけ事前に情報を入れな
いようにして作品を鑑賞することにしている。従って本作で
も「ロマンティックな題名だなあ」という程度の認識で試写
会に向かった。
物語の舞台は、英仏海峡に臨むフランスの町カレー。東京上
野の国立西洋美術館に設置されているオーギュスト・ロダン
の名作「カレーの市民」でも有名なこの港町で、現在もなお
続いている、フランス国家の恥とも言える状況が描かれる。
物語の主人公は、イラク北部からヨーロッパ大陸を4カ月掛
けて徒歩で横断してきたクルド人の若者。彼が想うのは、家
族と共に難民認定されてロンドンに移住した恋人のこと。そ
してカレーの海岸まで辿り着いた彼の前には、幅32kmの英仏
海峡が横たわっていた。
不法入国者の彼がその海峡を渡る方法は限られる。1番目は
仲介人に500ユーロ払ってトラックの荷台に潜む方法。しか
し若者はあるトラウマからそれを実行することができない。
2番目は160ユーロで列車に潜む方法だが、成功した奴はい
ないという。
そんな彼が立つカレーの海岸からは、イギリス・ドーバーの
白い崖が遠望される。それを見た彼は、町のプールで無けな
しの金をコーチに払いクロールの練習を開始する。その想い
はやがてコーチにも伝わって行くが…
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11月14日(日)
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