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On the Production
by 井口健二
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■第23回東京国際映画祭<コンペティション部門>
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※今回は、第23回東京国際映画祭のコンペティション部門※
※に出品された残り4本の作品と、その結果について紹介※
※します。なお文中物語に関る部分は伏せ字にしておきま※
※すので、読まれる方は左クリックドラッグで反転してく※
※ださい。 ※
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『ビューティフル・ボーイ』“Beautiful Boy”(アメリカ
映画)
息子の通っている大学で乱射事件が発生。その犯人は…我が
子だった。そんな子供を育てた親なら、一度は考える究極の
状況に陥った夫婦の物語。
その夫婦はすでに結婚生活に行き詰まり感じていた。母親で
もある妻は、大学の寮に入っている息子の携帯に何度も電話
しているが、いつも留守電のままだった。しかしその留守電
に夏休みの家族旅行の相談を入れた日、突然息子から電話が
掛かってくる。
そこにはちょうど父親である夫もいて、3人の弾まない会話
の末に旅行の計画は妻に任されるが、その会話自体にはさほ
ど不審な点はなさそうだった。ところがその翌日、大学で乱
射事件が発生。被害者の氏名もなかなか発表されず、不安の
募る中に警官がやってくる。
僕も2人の子供が大学の近くに間借りして家にいなかった頃
には、その方面で事故や事件の情報があると不安が募ったも
のだ。そんな時に願うのは、もちろん事件に巻き込まれてい
ないことだが、さらにその加害者には絶対にならないで欲し
いと考えることもあった。
そんな親にとってこの作品は、正に究極の事態が描かれてい
る。そこにはもちろん本作の舞台であるアメリカと日本の違
いもあるかも知れないが、事件とは別のところに描かれてい
る人間の行動には共通する部分も多いものだ。
出演は、2008年2月に紹介した『ジェーン・オースティンの
読書会』などのマリア・ベロと、昨年1月紹介『フロスト×
ニクソン』などのマイクル・シーン。それに2002年12月紹介
『ケミカル51』などのミート・ローフがちょっと儲け役で出
ていた。
監督のショーン・ウーは、学生時代に撮った短編が2004年の
サンダンス映画祭で喝采を浴びたとのことで、本作はその長
編第1作。2007年にヴァージニア工科大学で起きた事件に想
を得た作品とのことだ。
『フラミンゴNo.13』“فلامینگو شماره 13”(イラン映画)
イランの山岳地にある流刑の村を舞台に、そこでの流刑人た
ちの生活が描かれる。
物語は、刑務官の男が流刑人のチェックのため村を訪れると
ころから始まる。そして1人1人呼び出して名簿に拇印を捺
させることで、一通りの人物紹介がされる。
その物語の中心になるのは、未亡人の女性と、違法にフラミ
ンゴを撃ったことで流刑に処された狩人の男。それに未亡人
に一方的に恋心を募らせている粗野な男。他には、村長や語
り部でもある詩人や、ちょっと頭の弱いらしい若者などが登
場する。
そして、粗野な男のしつこさに手を焼いた未亡人が、狩人を
新たな配偶者に決めたことから物語は動き始める。それでも
諦めない粗野な男と、フラミンゴにとり憑かれている狩人の
男。やがて男たちの行動が新たな展開を生む。
そんな物語が、四季を通じたイラン山岳地帯の風景と共に綴
られて行く。そこには、民俗楽器で歌う流しの歌手や、詩人
が詩作を朗読する形式のナレーション、さらにはちょっとフ
ァンタスティックなシーンなども挿入されている。
ただあまりにも淡々とした物語の展開は、1日に4本も5本
も観ている映画祭の会場では多少体力的に厳しい面もあった
ようで、実は、映画の後半にはタイトル通り脚に13の刻印の
リングを付けたフラミンゴも登場していたが、見逃した人も
多かったようだ。
監督のハミド・レザ・アリリアンは長編作品は初めてのよう
だが、1980年生まれで、大学で映画製作コースに学び、すで
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11月01日(月)
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