ID:47635
On the Production
by 井口健二
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■第23回東京国際映画祭<コンペティション部門>
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※今回は、第23回東京国際映画祭のコンペティション部門※
※に出品された作品の中から、事前試写で観ることの出来※
※たものについて紹介します。なお、文中物語に関る部分※
※は伏せ字にしておきますので、読まれる方は左クリック※
※ドラッグで反転してください。           ※
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『わたしを離さないで』“Never Let Me Go”(イギリス・
アメリカ合作作品)
1993年の映画『日の名残り』の原作でブッカー賞を受賞した
カズオ・イシグロが、2005年に発表して再度ブッカー賞の最
終候補になった作品の映画化。
田園風景の中にひっそりと佇む寄宿制の学校ヘイルシャム。
そこでは子供たちが絵画や詩の創作を続けながら屈託なく暮
らしていた。美しいルースと聡明なキャシー、それにちょっ
と問題児のトミーもその一員だった。
やがて彼らは18歳になり学校を後にするが、3人はそのまま
コテージを借りて共同生活を続ける。そして3人に関るいく
つかの事件が起き、キャシーは「介護師」を目指すことにし
て、3人はそれぞれの道を歩み始める。しかし彼らの前途に
は過酷な運命が待ち構えていた。
物語は1950年代を分岐点とするある種のパラレルワールド物
と言える。ただしSFであってSFでない…、そんな感じの
作品だ。因に監督のマーク・ロマネクは、本作の物語を「過
酷な運命を懸命に生きることによって生まれるラヴ・ストー
リー」と定義しているようだ。
出演は、今年1月紹介『17歳の肖像』などのキャリー・マリ
ガン、次期“Spider-Man”でピーター・パーカー役のアンド
リュー・ガーフィールド、それに『POTC』のキーラ・ナ
イトレイ。他に、シャーロット・ランプリングらが共演して
いる。
ユアン・マクレガーが主演したよく似た内容の映画を2005年
7月にも紹介しているが、本作ではもっとしっとりと静かに
描いている。その静かさが心に染みる作品になっている。

『ブライトン・ロック』“Brighton Rock”(イギリス映画)
1947年にも映画化されたことのあるグレアム・グリーンの原
作を、1964年を舞台に再映画化した作品。
一見静かな海岸の町ブライトン、しかしその裏側では新興の
勢力と、旧来の地元の組織との熾烈な戦いが始まっていた。
そして地元組織の1人が殺され、その配下の若者によって復
讐が行われたとき、その犯罪の証拠が無辜のウェイトレスの
手に握られてしまう。
そこで若者はそのウェイトレスに接近し、その証拠の奪還を
目指すのだが、彼女の雇主もまたその事件の関係者だった。
そんな中で彼女は若者の真の目的も知らずに彼の真心を信じ
ようとするが…。
映画の背景とされた1964年は、イギリスで死刑が廃止される
前年ということだが、1930年代を舞台に描かれた原作の物語
も台頭する若者と旧来の組織の対決という図式で、それは正
に若者の台頭が始まる1960年代の物語を予見していたと言え
るとのことだ。
そんな物語が、フィルムノアールを思わせる演出の中で展開
されて行く。脚本と監督は、2007年『28週間後…』の脚本を
手掛けたローワン・ジョフィ。過去にはテレビの演出はある
が映画作品は初めてのようだ。
出演は2007年『コントロール』などのサム・ライリー。その
脇をヘレン・ミレン、ジョン・ハート、アンディ・サーキス
らが固めている。またヒロイン役のアンドレア・ライズボロ
ーは『私を離さないで』にも出ていたようだ。

『一枚のハガキ』(日本映画)
2007年5月紹介『陸に上がった軍艦』に続く映画監督・新藤
兼人による自伝を絡めた作品。
新藤監督は第2次大戦も末期になってから、30歳を過ぎなが
ら招集され、呉の海軍に所属、しかし軍艦はすでになく、そ
の任務は奈良の天理教本部や宝塚の大劇場などで、予科練兵
の宿舎を掃除することだったという。
しかし、当初100人いた同期兵は、上官のくじ引きで徐々に

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10月24日(日)
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