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On the Production
by 井口健二
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■サラエボ希望の街角、嘘つきみーくんと…、バスキアのすべて、ソーシャル・ネットワーク、極悪レミー、狼の時代/Date...+製作ニュース
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。 ※
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『サラエボ、希望の街角』“Na putu”
2006年ベルリン国際映画祭で処女作の“Grbavica”(邦題:
サラエボの花)が最高賞の金熊賞に輝いたヤスミラ・ジュバ
ニッチ監督による長編第2作。本作も、惜しくも受賞は逃し
たが、今年の金熊賞候補に選ばれている。
主人公は、サラエボに住むフライト・アテンダントの女性。
彼女は航空官制官の男性と同棲していたが、2人や祖母も望
む子供にはなかなか恵まれなかった。そして彼女は人工授精
も考えるようになっていた。
そんなある日のこと、男性が職場内での失敗から一時休職の
事態となる。しかし、男性にはその原因となった飲酒の癖を
止めることができなかった。そして家でぶらぶらしていた男
性は、昔の戦友の伝でパソコン教室の講師の職を得ることに
なるが…
その戦友はイスラム原理主義者で、その勤務先は原理主義者
たちが集団で暮らしているキャンプの中。この経緯に主人公
の女性は原理主義者たちによる洗脳を危惧し、男性に就職を
断るように頼むのだが。
脚本も手掛けている女性監督の弁によると、登場する宗教は
何でも良かったが、両親も帰依するイスラム教が身近で、自
然とそれで描くことにしたとのことだ。しかし我々にとって
イスラム原理主義と言われると、どうしても構えてしまう部
分がある。
そんな展開で話は進んで行き、当然のように男性は原理主義
へと走り、2人の間に亀裂が生じて行く…。という物語が、
サラエボ近郊の美しい自然や怪しげなキャンプ、それに巨大
モスクの内部などの映像と共に綴られて行く。
監督自身はイスラム教徒ではあるが原理主義者ではないと称
しており、物語も原理主義に対しては批判的な面も描かれて
いる。しかしそれを完全に否定している訳ではなく、僕らの
目からすれば容認しているようにも取れてしまうものだ。
だからそんな目で観ていると、主人公の態度には歯痒さもあ
るし、僕としては、ラマダン明けの祝いのシーンで描かれる
祖母の態度に一番共感できるところがあった。
邦題に付けられた「希望」という言葉には、@こうしたいと
いう望みと、A明るい未来への予感という2つの意味がある
と思う。本作は当然Aの方だが、@と取った場合には、本作
で具体的な「希望」を述べているのは同棲相手の男性だけ、
それにはちょっと危険な感じもした。
因に原題は「道の途上」という意味だそうだ。また監督自身
の「希望」は、ルーマニアの再統一のようだ。
出演は、ヨーロッパ映画界において有望な若手に対して贈ら
れるShooting Stars賞を本作で受賞したズリンカ・ツヴィテ
シッチと、プロデューサーも務めるレオン・ルチェフ。特に
ズリンカは日本人にも親しみやすい顔立ちの女優で、彼女の
他の作品も観たいものだ。
『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』
2006年の電撃小説大賞で最終選考に残ったという入間人間原
作の映画化。
何だか意味不明の題名だが、登場するのは間違いなくその通
りの2人。そして物語は何故2人がそうなったかを綴って行
く。
ただまあその原因というのが、確かにこんなこともあるかと
は思うがかなり残酷なもので、一般常識からすれば容認しが
たいものだった。さらに物語では、そこに現在進行中の連続
通り魔殺人事件と、幼児の誘拐事件が絡んでくる。
正直に言って僕は、映画の前半ではミヒャエル・ハネケの一
部の作品のような居心地の悪さを感じていた。もちろんそれ
はハネケほどの完成されたものではないが…。でもこんな作
品が一部では持て囃されていることも現実なのだろう。
またテーマ的には、前回紹介した『白夜行』に似たところも
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10月17日(日)
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