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On the Production
by 井口健二
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■マザーウォーター、ふたたび、レオニー、ビッチ・スラップ、裁判長!ここは懲役4年でどうすか、ドアーズ、義兄弟、リトル・ランボーズ
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。 ※
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『マザーウォーター』
2006年1月紹介『かもめ食堂』、07年9月紹介『めがね』、
09年7月紹介『プール』の3作品を作ってきたプロジェクト
による最新作。ヘルシンキ、与論島、チェンマイに続く今回
の舞台は京都。鴨川や疎水の流れを脇役にゆったりとした物
語が描かれる。
古い家並みが連なる京都の街の一角で、3人の女性がそれぞ
れ自分の店を開店する。それはウィスキーしかないバーと、
コーヒー専門店と豆腐屋。それともう1軒、銭湯があって、
それらの店を巡って、4人の女性と3人の男性、それに赤ん
坊の物語が展開される。
物語は、前3作と同様に有って無いようなもので、そんな物
語が静かな京都の街を背景にゆったりと展開されてゆく。で
も全く変化が無い訳ではなくて、そこでは人々の関係が徐々
に構築され、またそこから旅立って行く人も現れる。
そんな少しずつ変化して行く人々の関係が、静かな雰囲気の
中でしっかりと着実に描かれて行く。
前々回紹介したハリウッド映画の『食べて、祈って、恋をし
て』は、主人公が移動することによって新たな自分を発見し
て行ったが、本作では逆に動かないことで自分自身を見付け
出す、そんな感じの物語だ。
出演は4作連続の小林聡美ともたいまさこ、『めがね』にも
出演の市川実日子、光石研、加瀬亮。加瀬は『プール』にも
出ていた。それに本作では、小泉今日子と今年3月紹介『ソ
フトボーイ』などの永山絢斗が新たに加わっている。
初参加の小泉は、今までの作品の雰囲気からはちょっと華や
かすぎないか懸念したが、光石とのシーンではその華やかさ
が活き、市川、小林とのシーンでは上手く溶け込んでいる感
じがした。
他には、オーディションで選ばれた地元の人たちが出演して
いるようだが、特に登場人物の皆から愛情を注がれるポプラ
役で出演の赤ん坊の存在が、映画の全体の雰囲気を見事に整
えている。
監督は、前2作でのメイキングを手掛けたという松本佳奈。
フードスタイリストの飯島奈美、スタイリストの堀越絹衣、
美術の富田麻由美ら常連のメムバーと共に、前3作と変わら
ない世界観を丁寧に描き出した。
何も変わらないように観えても、何かが少しずつ変化して行
く。それはドラマティックではないかもしれないが、僕には
いつも愛しく感じさせる物語だ。特に本作では、市川の店で
出される器の変化が嬉しかった。
『ふたたび』
50年の時を超えて戻ってきた祖父を巡って、その存在が家族
に与える様々な影響を描いた作品。
その祖父は50年前に亡くなったと家族には伝えられていた。
しかしそれはある理由から真実が伝えられなかったもので、
その理由とは、祖父がハンセン病で療養所に強制隔離されて
いたという現実だった。
主人公となるのはその一家の大学生の息子。現在大学生とい
うことは1990年前後の生まれと考えられるが、人権差別法の
「らい予防法」が廃止されたのは1996年。主人公が生まれた
頃には祖父はまだ強制隔離中だったのだ。
1960年代には治療法が確立していながら、政府の無策で近年
まで廃止されなかった法律により、今なお日本全国の療養所
に約2500人の元患者が社会復帰できないでいるハンセン病。
今でも続いているその苦しみが描かれる。
ただし物語は、ハンセン病の暗い面だけでなく、実は優秀な
JAZZマンだった祖父が、自分が発症したために叶わなかった
LIVEステージデビューを目指して、同じくJAZZに傾倒してい
る孫と共に昔の仲間の所在を訪ね歩くロードムーヴィの形式
も採っている。
その旅は、神戸から和歌山を経て名古屋にまで及ぶが、それ
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08月29日(日)
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