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On the Production
by 井口健二
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■コロンブス永遠の海、ノン、バレンタインデー、昼下がりの情事、しあわせの隠れ場所、鉄拳、月に囚われた男、トイ・ストーリー(3D)
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
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『コロンブス永遠の海』“Cristóvão Colombo - O Enigma”
2007年9月に『夜顔』を紹介している1908年生まれのポルト
ガル監督マヌエル・デ・オリヴェイラによる2007年の作品。
『夜顔』と同じく監督99歳の時の作品になるが、映画の後半
では監督自身が夫人と共に登場して赫灼とした姿を見せてお
り、その健在ぶりも示される。その後も監督は年1、2作の
発表を続けていて、今年も新作を準備中だそうだ。
物語は、映画の製作当時に話題になっていた「コロンブス=
ポルトガル人説」に基づき、その検証やコロンブス及びポル
トガル人の業績を語っているもので、映画の前半では、若く
してアメリカに渡ったポルトガル人青年のドラマなども描か
れるが、大凡はセミドキュメンタリーというかルポルタージ
ュの雰囲気で綴られている。
従って、その映画製作もそれほど体力のいるものではなかっ
たかも知れないが、少なくとも映画の前半では、1946年に設
定された時代の雰囲気を良く再現しているし、その演出は確
かなものだ。
出演は、監督の孫に当る俳優リカルド・トレパが晩年を監督
自身が演じる主人公に扮し、相手役をポルトガルの作家アウ
グスティナ・ベサ=ルイーシュの孫娘のレオノール・バルダ
ックが演じる。その晩年を監督夫人が演じているものだ。
また、ナレーターと主人公らが見学する美術館の館長役を、
ジョン・マルコヴィッチの監督作品に出演したこともあると
いうスペインの俳優ルイーシュ・ミゲル・シントラが演じて
いる。
他に、エンジェルという役名で登場する少女がロレンシア・
バルダックという名前で妻役の女優と同じ姓だが、2人は姉
妹なのかな。さらに主人公の母親役で、オリヴェイラ監督の
1993年作『アブラハム渓谷』などのレオノール・シルヴェイ
ラが出演。
「コロンブス=ポルトガル人説」というのは聞いたことはあ
ったが、ここまで丁寧に検証されると信じたくなってくる。
特にコロンブスが名付けたキューバという地名が、その説に
よる彼の生地と同じというのには、納得させられたところだ

『ノン、あるいは支配の空しき栄光』
          “'Non', ou A Vã Glória de Mandar”
ポルトガルのマヌエル・デ・オリヴェイラ監督による1990年
の作品。本作は以前にも日本公開されているらしいが、今回
は上記作品の公開に先駆けて4月下旬に岩波ホールで限定公
開が行われることになり、改めて試写を観せて貰えた。
基本の物語は、1974年春頃の出来事で、国連の勧告に反して
植民地を手放そうとしない軍事政権によってアフリカの植民
地に送り込まれたポルトガル兵たちが、ブッシュの広がる荒
れ地を輸送トラックで移動して行くというもの。
そのトラックには大学でポルトガル史を研究していたという
少尉の率いる小隊が乗車しており、荷台の彼らは派遣した政
権への不満を語り合っている。そして少尉は、彼らにポルト
ガルが経てきた敗北の歴史を語り始める。
それは最初に紀元前2世紀のローマ軍との戦い、次は15世紀
後半の統一王国の模索、さらに16世紀後半のモロッコ遠征、
そして現在(1974年)の植民地維持のための戦い。それらは
何れもが空しい戦いの歴史だった。
しかしポルトガルにも、戦いとは関係の無い栄光や技術革新
の歴史がある。それは新世界への進出やヴァスコ・ダ・ガマ
の業績など。それらを忘れて戦いを続けることの空しさ。オ
リヴェイラの作品には常に死と破滅が描かれるそうだが、本
作もその例に漏れない。
それにしてもポルトガルという国には、ヨーロッパのスペイ
ンの先にある大西洋に面した小国ぐらいにしかイメージが無

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01月31日(日)
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