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On the Production
by 井口健二
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■すべて彼女の…、処刑山、海の金魚、やさしい嘘と贈り物、フローズンR、パーフェクトG、パラノーマルA、シェルター、サロゲート(追)
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。 ※
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『すべて彼女のために』“Pour elle”
2007年2月紹介『チャーリーとパパの飛行機』の父親役など
のヴァンサン・ランドンと、ドイツ出身の国際女優ダイアン
・クルガーの共演で描く究極の夫婦愛の物語。
無実(?)の罪で投獄された妻を救うために、一介の国語教
師が究極の手段に訴え出る。本作の成立の経緯は良く判らな
いが、実話の映画化と称してもいいほどの迫真したドラマが
展開される。
主人公は、妻とまだ幼い1人息子の3人家族で暮らす高校の
国語教師。だがその平穏な家庭の暮らしが突然の警官の乱入
で一変する。出版社に勤めていた妻の上司が殺され、妻がそ
の容疑者となったのだ。
妻は拘留され、裁判が続く中で夫は妻の無実を信じるが、目
撃者や物的証拠、それに犯罪の動機などで妻の不利は否めな
い。やがて判決が下され、夫婦は絶望の淵に立たされる。そ
して夫が取った行動は…
物語では、一応回想シーンで妻以外の犯人が示されるが、そ
の描き方は微妙で、勘繰れば真犯人は妻であってもいいよう
な展開にもなっている。だが仮にそうであったとしても、こ
の夫の妻への愛情は揺るぎないものだったということになる
だろう。
夫や妻が追い詰められて行く過程も丁寧且つ納得の行くよう
に描かれているし、ノンフィクション、フィクションを問わ
ず同様のテーマの作品はいろいろある内でも、本作は完成度
の高い作品と言えそうだ。
因に、本作はハリウッドでのリメイクが進められており、そ
の監督と脚本は、2006年『クラッシュ』と2007年『硫黄島か
らの手紙』で2年連続オスカー脚本賞を受賞したポール・ハ
ギスが、自身では初のリメイク作品として手掛けることにな
っているそうだ。
令状なしの身柄拘束や家宅捜索など、観ていて気になる点も
ままある作品だが、フランス警察の横暴さを見せるというこ
とでなら、これも有りかも知れない。でもまあそんな末節に
拘わる暇もないほどに緊迫した物語が展開されて行く。
1人息子の態度や妻の持病など、いろいろな要素が巧みに構
築され、最後まで全く目の離せない作品となっていた。
『処刑山』“Død snø”
ナチスドイツの残党が冷凍のゾンビとなって若者たちを襲う
ノルウェー産のホラー作品。
背景は現代。男女5人のグループが街道で車を降り、徒歩で
雪深い山間のロッジを目指している。そこはグループ内の男
のガールフレンドが所有するもので、ガールフレンド自身は
別途スキーによる山越えで現地を目指しているらしい。
そしてロッジに着いた若者たちは思い思いのやり方で雪山を
楽しみ始めるが、夜になり、離れて建つトイレに向かった1
人が異様な人影を目撃する…。その地には、戦時中ナチスの
基地が置かれ、敗戦後に暴虐の限りを尽くしたまま姿を消し
たという歴史が有った。
今年11月紹介の『誰がため』や、『ミレニアム/ドラゴンタ
トゥーの女』にもナチスの話は出て来たが、ヨーロッパ特に
北欧圏におけるナチスの影というのは、ナチスとの関係も複
雑だし、ミステリーからホラーまでいろいろな題材になるも
のだ。
そんな中でホラーの本作は、基本的には娯楽作品となるもの
だし、取り立ててナチスだからどうのという展開が有る訳で
はないが、日本で言えば落ち武者に相当するのかな。でも、
近代兵器を持っている分、いろいろ面倒(?)になったりも
する。
ただし本作は背景が雪山だから、ゾンビもジョージ・A・ロ
メロばりにゆらゆらとという訳にも行かず、突然走り出した
り…と言うのは、まあ本作に限っては仕方ない面も有りそう
だ。実際、足元が覚束ない状態ではゆっくり歩く方が様には
ならない感じだろう。
そんな訳で、物語の主題はゾンビ対若者の闘いとなるものだ
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12月27日(日)
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